【再休職ゼロへ】産業保健師のための復帰者の自律支援&再発リスク撃退マニュアル

こんにちは!産業保健師のなのんです。
メンタル不調者への対応を行っている産業保健師の皆さん、このようなお悩みはないでしょうか?

メンタル不調から復帰した従業員へのフォロー面談では何を尋ねればよいでしょうか?



メンタル復帰後のフォロー面談で気づきを促せず再休職が続き、打開策が見つからず悩んでいます。。。



産業医の復職面談で、人間関係が原因の不調者が「我慢する」「気にしない」を再発防止策に挙げるたび、「それでは再発が防げないような・・・」と心配です。



私も産業保健師1年目の際に同じような悩みや懸念を感じていました。経験が浅いうちは自身のメンタル対応に不安を感じますよね。
このようなお悩みを感じているのは、あなただけではなくて、
多くの産業保健師さんが抱える悩みでもあります。
メンタル不調者の「再休職」を防ぐカギは、再発防止策にあります。
再発防止策は、企業 &職場の取り組みだけでなく、本人が自律的に再発防止に努めることが肝です!
保健師面談で、再発防止策を考えさせる質問の投げ方を意図的に変えるだけでも、本人が「自分ごと」として考え始め、再発リスクを大きく減らせるケースが少なくありません。
そこで本記事では、
- 再休職&再発がもたらす影響&デメリット
- 再休職しやすい人・順調に復帰できる人の6つの特徴の違い
- 企業・本人それぞれの再発防止策
- 復帰後の保健師面談で使える「再休職を防ぐ」の5つの質問
をまとめました。
具体的なフレーズを手に入れて、「再発ゼロ」を目指しましょう!
再発防止策を想定しながら、休復職者支援に取り組む。
保健師面談などで意図的な質問を投げかけ、社員自身の気づきを促すことがメンタル再発防止の鍵。
休職(メンタル不調再発)を防ぎ、復帰後も安心して働き続けるためのヒントをお届けしますね。


- 新卒から産業保健師歴約15年
- 産業保健師としての企業での活動実績
- 産業保健体制の立ち上げ支援 4社
- オンライン健康セミナー 約10回/年
- メンタル&フィジカルの保健師面談 約30件以上/年
- 営業職・研究職・臨床検査職・事務職・配達業務職・小売業・物流センター・製造業・金融業・IT企業など様々な職種の従業員に対して産業保健サービスを提供
基礎から実践まで、“できる産業保健師”を育成!
復職失敗・・・再休職/再発がもたらす影響&デメリット





先日、再休職になった方がおり、本人も「自分には無理だった」と落ち込んでいました。さらに、その上司も自分を責め続けており、負の連鎖に陥っているように感じてしまいました。



よくあるあるな再休職の影響ですよね。
再休職やメンタル不調の再発は、本人への影響だけでなく職場全体や会社の経営、人事リソースまで大きな影響を及ぼします。では、なぜ再発防止策が必要なのか、その影響とデメリットを丁寧にご紹介していきますね。
再休職&再発がもたらす影響(本人)


- 自己肯定感の低下
- 一度復帰しても再休職を繰り返すことで「自分はダメなのでは…」という思い込みが強まる。
- キャリアへの悪影響
- 長期離脱が続くと、昇進・評価機会を逃し、将来的なキャリア形成にマイナスに働く。
- 経済的損失
- 休職中の収入減(※傷病手当金は出るが、通常の給与の約6~7割程度であることが多い)や、再休職を繰り返すことで手当や保険給付に限度が生じる場合も。
再休職&再発がもたらす影響(会社&組織)


- 生産性の低下
- 代替人員の手配や業務引き継ぎに時間が割かれ、本来の業務が停滞する。
- 職場の不安定化&士気の低下
- チームメンバーが「また同じことが起こるのでは…」と心理的負担を抱え、連携やコミュニケーションがぎくしゃくする。
- チームメンバーが、「自分もメンタル不調を起こすのではないか…」と不安を感じたり、業務に対するモチベーションが下がり、目標達成への意欲が減退する。
- 人事・管理リソースの圧迫
- 休職手続き、復帰面談、再休職手続き…管理部門が同じ対応を何度も繰り返すため、人事労務の業務負荷が増える。
- コスト増大
- 代替人員の採用・教育コストの上昇など。
- 信頼関係の歪み
- 上司・同僚とのコミュニケーションがこじれ、職場全体のモチベーションや結束力が下がる。
- 企業イメージの低下
- 長期的なメンタル不調対応に課題がある企業として、社員・外部ステークホルダーからの信頼が揺らぐ可能性。



再休職&再発は、復職の“失敗”でもあります。復職の“失敗”とみなされる主な状況についても理解しておきましょう!


再休職しやすい人の特徴6選 & 復帰が順調な人の特徴6選


まずは「どんな人が再び休職しやすいのか」「どんな人が復帰後スムーズに働き続けられるのか」を押さえることが重要です。面談でこれらの傾向を把握し、それぞれに合った働きかけを行うことで、再発リスクを大きく下げられます!



再休職しやすい人ってどんな特徴があるんでしょうか?



私がこれまで産業保健師としてメンタル不調者の復職面談や復帰後フォロー面談に関わった中での特徴をまとめています!
特に再休職しやすい人の特徴に当てはまる項目が多い従業員は要注意!
再休職しやすい人の特徴6選


- 病気の影響下にある感覚
- 復帰後も「まだ自分はメンタルが本調子じゃないから通常に働けない」という意識が強く、会社や職場に過剰な配慮を求めがちです。小さな体調の波を過剰に捉え、すぐに「早めに有休を使って休まないと…」と思い込む傾向があります。
- 指示待ちで動き始める
- 自発的に動くのではなく、何か指示がないと動き出せません。再発防止策を自らやろうとせず、症状が悪化するのを放置してしまう傾向があります。
- ネガティブ感情が支配的
- 「どうせ自分は…」「また同じ失敗を繰り返すのでは」といったネガティブ思考にとらわれやすく、モチベーションの波が激しい傾向があります。日によって、感情の波があり、上司や同僚が業務の指示を出して問題がないのか心配になります。
- 過去の出来事に囚われがち
- 休職前の失敗やミスを何度も振り返り、「自分はダメな人間だ」という自己否定が強い状態。過去の経験から抜け出せず、新たなチャレンジに踏み出せません。
- 休職事由が「職場の人間関係」である場合、苦手な方と会う度に思い出し、嫌な気持ちが芽生え、再発する傾向。
- 他人の意見を聞きすぎたり、まったく聞かなかったり
- 保健師面談で、アドバイスを受け入れすぎて自信を失うか、逆に全く聞き入れずを自分は大丈夫と判断してしまうなど両極端になりやすいので、支援策がうまく伝わらないことがあります。
- 復帰を「ゴール」と捉えている
- 「復帰したらもう大丈夫」と思い込み、復職後のフォローや自己ケアをおろそかにしがちです。実際には復帰後こそ継続的な配慮が必要なのに、その意識が抜け落ちています。



復帰者の多くは、復帰を「ゴール」と捉えがちで、「もう大丈夫」と感じてしまい、復帰後3ヶ月の間にセルフケアを怠ってしまいがち。
復帰後3ヶ月の間は、上記傾向がないかを復帰後フォロー面談で保健師が確認し、アセスメントしていきましょう!
復帰が順調な人の特徴6選


- 病気に関係なく行動・考え方を選択できる感覚
- 「私は通常に働くことができる」と捉え直し、状況に応じて自分の行動をフレキシブルにコントロールできます。病気のレッテルに縛られず、主体的に前向きな行動を選び取れます。
- 自ら考え、自ら進んで動く
- 指示を待つのではなく、復帰後も体調を崩さないために必要な情報を自分から集め、職場のコミュニケーションやセルフケアを自発的に行うという自立性があります。これにより、再休職も防げます。
- ポジティブ感情が支配的
- 小さな成功や進歩を素直に喜び、自己効力感を維持しやすい。たとえつまずいても「次はこうしてみよう」と切り替えが早く、前向きなモチベーションを保てます。
- 今、注力すべきことにエネルギーを集中
- 自己管理ができており、「今この瞬間」に最も必要なタスクやセルフケアに集中できます。過去や未来の不安にとらわれず、目の前の改善に取り組む力があります。
- 他人の意見を程よく取り入れて、行動に活かす
- フィードバックを柔軟に受け止め、自分に合う部分を選択的に取り入れられます。周囲との協調性も保たれ、サポート体制を最大限に活用できるため、復帰後の進捗を加速します。
- 復帰を「スタート」と捉えている
- 復帰をゴールではなく、リスタートと位置づけています。そのため、復帰後の面談や復職支援プログラムの遂行、セルフケアを継続的に実践し、長期的な安定就労を目指しています。



面談では、まず相手がどちらの傾向に近いかを観察してみましょう!
企業・本人それぞれの再発(再休職)防止策


メンタル休職者の円滑な職場復帰を実現するためには、組織的かつ計画的な復職支援体制の構築だけでなく、本人のセルフケア力向上という二つの両輪が必要です。
企業におけるメンタルヘルス対策(再休職防止策)


企業がメンタル休職者の円滑な職場復帰を実現し、再発防止やトラブル回避を図るためには、組織的かつ計画的な復職支援体制の構築が不可欠です。
- 休業開始と休業中の対応
- 診断書の提出、必要最小限の休業中の連絡。
- 主治医による復職可否判断
- 主治医の診断書提出、復職意思確認。
- 復職面談の仕組み化
- 産業医による復職面談で、復帰しても問題がない体調であるか確認。産業医意見聴取。
- 復職支援プログラムの説明
- 復帰前に本人・上司で「業務内容」「勤務ペース」「配慮事項」をすり合わせを行う。
- 復職判定会議
- 本人、産業医、人事労務担当者、休職者の上司、産業保健師など関係者で復帰の可否を判断。各関係者の参加は、会社によって異なる。
- 判断基準(働けるか、不調にならないかなど)を本人以外の関係者が一枚岩で対応できるようにあらかじめ方向性を明確にする。
- 復職支援プログラム
- 復帰直後は残業なしや業務量を通常の○%程度に抑えるなど3ヶ月かけて100%に戻すフェーズを設定。※会社によって、内容や期限はまちまちであるが、3ヶ月かけて戻していく方が職場の負担は少ない。
- 復職支援プログラム中の月1回程度の復帰後フォロー面談(※復帰後のフォロー面談の頻度は本人の経過や会社の状況により異なる)。
- 定期的な本人・上司の1on1面談で早期兆候をキャッチ。
- 職場のメンタルヘルスの理解促進
- 定期的な従業員へのメンタルヘルスに関する情報配信。
- フレックスタイム/在宅勤務制度など、柔軟な働き方を制度化。
- EAP(従業員支援プログラム)の導入・活用
- 外部専門家によるカウンセリング窓口を設置し、本人がいつでも利用しやすい環境整備。
- データ管理と効果検証
- 休職・復帰・再休職のデータを管理し、KPI(再休職率、復帰定着率、面談実施率など)を設定し、改善施作のPDCAを回す。
当事者本人によるセルフケア策(再休職防止策)


メンタル不調からの復職後、再休職を防ぐために本人が実践できるセルフケア策は、日常生活の工夫から思考の見直し、適切なサポート活用まで多岐にわたります。再発防止のカギは「自分自身の状態に気づき、無理せず早めに対処する」こと。ここでは、具体的なセルフケア策を7つの視点でご紹介します。
- 規則正しい生活習慣の維持
- 毎日同じ時間に起床・就寝し、体内リズムを安定化。
- 栄養バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠を意識。
- 部屋の整理整頓や衛生管理も、心の安定に寄与。
- リラックスとストレス解消法
- 趣味や好きな活動の時間を意識的に確保。
- ヨガ・ストレッチ・入浴・読書など、自分に合ったリラックス法を見つける。
- 運動して、体調や気分をあげる。
- 自分の状態を客観的に把握
- ストレスや体調の変化に早めに気づけるよう、日々の気分や体調を記録する。
- セルフモニタリングを実施。
- CBT(認知行動療法)による思考パターン整理
- 休職理由や過去の不調原因を分析し、同じ状況になった時の対処法を身につける。
- 休職中の振り返りの実施。
- 苦手なことや困難なことを避けず、適切な対応策を見つける意識を持つ。
- リワークプログラムの活用
- リワークプログラムでは、専門家の指導のもと、ストレス対処法や自分の体調・気分の変化への気づき方など、セルフケアに必要な知識とスキルを学ぶことができる。




気づきを促す!保健師面談で使える質問&再発(再休職)防止策の立案ステップ


保健師面談で使える「再休職を防ぐ」の5つのパワークエスチョン


以下は、復帰後フォロー面談や復職面談で本人へ投げかけたい質問をまとめました!場面に応じて使い分け、本人の気づきと自己管理を促しましょう。
- 再発防止策の質問
- 「同じような状況が起こりそうなときに、再発しないようにどのような対策を行いますか?」
- 「自分が再び不調に陥りそうだと感じたら、どのように対処しますか?」
- 教訓化に関する質問
- 「今回の休職について、どんな学びや経験となった?」
- 「休職期間中に、どのような気づきや学びがありましたか?」
- 健康状態に関する質問
- 「復帰して1ヶ月ですが、体調はいかがですか?」
- 「睡眠の乱れはありますか?」
- 「最近の体調レベルを10段階で評価すると、どの程度ですか?」
- 思考の癖に関する質問
- 「どのような行動や思考を改善することができましたか?」
- 「休職前と比べて、考え方の変化はあった?」
- ストレス対処に関する質問
- 「ストレスを感じたとき、どんなサインが出ますか?」
- 「ストレスを溜めないために、取り入れている習慣はありますか?」



本人が自分の状況を客観的に振り返り、再発予防や自己管理ができるように質問していこう。
保健師面談での“影響の輪”で考える再発(再休職)防止策の立案ステップ


影響の輪・関心の輪とは


Stephen R. Covey の著書である「7つの習慣」では、“影響の輪”に集中することで、徐々に自分が影響を及ぼせる範囲が広がってくると書かれています。メンタル不調者は、変えられないこと(関心の輪)にフォーカスしがちで、その結果、影響できる範囲が縮小し、無力感や被害者意識を強めてしまいます。
- 関心の輪(Circle of Concern):気になること全般(会社制度、組織文化、経営判断 など)
- 影響の輪(Circle of Influence):自分で働きかけられること(コミュニケーションの仕方、業務改善提案 など)
具体的ステップ


- 社員さんに、今感じている「我慢していること」「不満に感じること」を全て挙げてもらいます。
- それらを一つずつ、「自分で変えられる」「変えるのが難しい」に仕分け。
- 例えば、「苦手な同僚から離れたい」は → 「苦手な同僚とのコミュニケーションの取り方を変える」など、影響の輪に移せる項目もあります。
- 影響の輪に入った項目から達成可能なアクションを選択。
- 例:「セルフケア力向上のために、週1回ウォーキングをする」「月1冊コミュニケーションの本を読む」
- Specific(具体的)、Measurable(計測可能)、Achievable(実現可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限付き)で目標を設定。
- 例:「来週月曜の朝礼で、5分で業務改善案を発表する」
- 月1回程度、フォロー面談を設定し、「何がうまくいったか」「次はどう調整するか」を一緒に確認。
Q&Aコーナー


私が産業保健師さん方からいただく再発防止策に関するお悩みに対して、産業保健師なのんだったらどう考えるのかっという視点で回答いたしました!
- 休職の理由が「会社要因がメイン」と思っている本人に再発防止策を考えてもらうのが難しい…
-
「自分の影響の輪」に焦点を当て、変えられる範囲(業務の進め方、物事の捉え方、コミュニケーションの取り方など)にアプローチを促しましょう!
影響の輪にフォーカスして、従業員自身が取り組める小さな一歩を従業員自身が小さな一歩の設定できるようにしていきましょう。また、会社要因が強いと思っている方は他罰的な傾向にあり、会社や職場がその従業員の対応に困っているケースもあります。
最終的な会社のゴール(自主退職を促したいのか、再休職しながら定年を待つのか、異動させるのかなど)を関係者へ確認し、共通認識を持って対応に臨みましょう! - 本人に“当事者意識”を持ってもらうにはどうしたらいい?
-
保健師面談の中で「本人の理想像」と「最初の一歩」を引き出す問いかけが効果的です。自己効力感を高め、自分事として主体的に取り組む意識を築いていきます。
「最終的にどうなっていたいですか?」「この会社でどんなことをやっていきたいですか?」→ 理想の状態を具体化し、「今日からすぐに始められることは何ですか?」→ 現実的かつ小さな行動を伺う。
まとめ:産業保健師の再休職を防止する介入で再休職リストを減らそう!
再発防止は「仕組みづくり」と「本人の自己理解」の両輪で進めることが大切です。産業保健師として、従業員・組織・会社視点を持ちながら、安心して働き続けられる環境を一緒に支えていきましょう!
産業保健の実務に関するお悩みがある方は、育成プログラムに参加することで新たな気づきや解決のヒントが得られます。みんなと一緒に成長していきましょう!
産保ゆめUPスクールでは、産業保健師の基礎的な実践力を鍛える産業保健師育成プログラムサービスをご提供しています。
産業保健師に必要なスキルや基礎知識、企業で働く上での考え方を網羅し、実践力を鍛え、産業保健師としての成長と自己実現につながる講座となっています。
一緒に成長していきましょう!


\ 産業保健師の実務力を鍛える/
最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!


- 産業保健師の転職から成長までトータルサポート!
- 産業保健師の転職支援の実績
- 延べ約50名の転職相談を担当し、内定率90%を達成
- 履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ支援により、書類通過率90%
- 模擬面接+フィードバックにより、「自信を持って面接に臨めた」と高評価
- 産業保健師の実務相談および育成プログラムの実績
- 個別実務相談(事後措置・休復職支援など)を約10名分実施
- 「入門コース」(5名)→「実践コース」(11名)の育成プログラムを提供
- 産業保健師向け勉強会(つながる産保カフェ)を毎月開催し、延べ参加者数30名以上、「勉強になった」「新しい視点を得られた」と高評価
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