心の健康も守れる職場へ!産業保健師が実践する休職者分析

産業保健師の永松希望です。
この記事では、私が実際にやってきた休職者分析について、「なぜ始めたのか」「何を分析したのか」「結果をどう見せたのか」までをまとめてシェアします。
※記事内のデータは実際のデータをもとにしつつ、特定の企業や従業員が識別されないよう、業界の傾向に沿って大幅に加工・修正しています。特定の個人や企業が識別されることはありません。
「先輩の産業保健師がどんなふうに休職者分析をしているのか」を知って、使えそうなところから取り入れてもらえたらうれしいです。
永松希望先輩産業保健師がどんな風に休職者分析を行なっているのかを知り、参考にできる点を取り入れていきましょう!


永松希望(ながまつ のぞみ)
- 新卒から産業保健師ひと筋16年(産業医科大学 産業保健学部卒)
- 産業保健体制の立ち上げ支援4社/育成プログラム約20名に提供
- 実務相談・転職相談 のべ50名以上
- IT・製造・小売・物流・金融・調剤など多業種で産業保健サービスを提供中
休職者分析を提案して、反応ゼロだった話
ある企業で産業保健師として活動を始めて2か月目のこと。正直、驚きました。思っていた以上に、メンタル不調で悩んでいる従業員が多い職場だったからです。
「なぜこんなに多いんだろう?」 「もしかして、ある時期や特定の条件で不調が起きやすいのでは?」
そう考えて、休職者分析の必要性を強く感じました。休職が発生しやすい時期や特徴がつかめれば、予防策につなげられるかもしれない。そんな期待を抱いて分析をまとめ、3か月目に初めて報告しました。
結果は……想像以上に静かでした
「ああ、そうなんですね、面白いですね〜」
反応はこれくらい。「まあ、そんなもんだよね」と思いつつ、次の機会を虎視眈々と狙うことにしました。
流れが変わった瞬間
しばらくして上司が交代し、新しい体制になりました。すると「この分析をもっと活用していこう」という流れが生まれたんです。ここからがスタート。休職者分析を軸に、より効果的な支援策を考える道筋ができました。
「頭出し」しておくことの意味
この経験から感じているのは、小出しでも問題提起をしておくこと自体に大きな意味があるということ。「休職者分析が必要だ」という気づきを持ってもらう。そのスモールステップが、後々の流れをつくります。
すぐに大きな反応がなくても、休職者分析はいずれ職場改善の土台になる。上司が誰になるかで関心ごとは変わるので、準備を怠らず、提案するタイミングを逃さないことが大事です。



上司が誰になるかによって関心ごとは変わってくる!準備を怠らず、提案するタイミングを逃さないことが大事
いちばん大事なのは「何のために分析するか」
休職者分析でいちばん大事なポイントは、目的を明確にすること。これに尽きます。
ぶっちゃけ、休職者分析は時間も労力もかかります。目的をはっきりさせないまま進めると、せっかく時間をかけて分析した結果を活かせず、「やっただけ」で終わってしまいます。
休職率、休職者発生率、メンタル退職率、休職事由、入社後の休職時期、再休職率、職種別の傾向、上司ごとの休職者発生状況……。分析できる項目はたくさんありますが、「その結果をどう使うのか」が先です。
私の場合は、この2つを目的にしています。
- セルフケア介入のタイミングを決めるため(入社後いつ頃に不調が出やすいか、など)
- マネジメント上の課題を特定するため(上司や部署ごとの傾向から)
目的が決まれば、分析する項目も自然と絞れてきます。



ぶっちゃけ、休職者分析は時間も労力もかかります!目的を明確にしないまま進めると時間をかけて分析した結果を結局役立てることができず、時間の無駄になってしまいます。
休職率、休職者発生率、メンタル退職率、休職事由、入社後の休職時期、再休職率、職種別の傾向、上司ごとの休職者発生状況などを分析した結果をどう活用するのかが大事です。
休職者分析でわかること・できること
産業保健師が休職者分析をすると、組織にも従業員にもメリットがあります。
原因の特定と予防策の立案
どの部署や業務に負荷がかかっているかが見えてきます。「特定のプロジェクトに関わる社員が不調を抱えやすい」といった傾向が見つかれば、業務改善やサポート体制の強化につなげられます。
早期介入による離職防止
「入社1年目の社員にメンタル不調が多い」という結果が出れば、早い段階で人事や採用と連携し、支援を届けられます。
職場環境改善のヒント
「管理者からのフィードバックが足りない」「リモートワークで孤立感が強まる」など、数字の裏にある課題が浮かび上がることがあります。
組織全体の生産性向上・企業イメージの向上
休職者が減れば周囲の負担も軽くなり、結果的に組織全体の生産性やエンゲージメントの向上につながります。「社員の健康を大切にする会社」という姿勢は、採用や定着にも効いてきます。



休職者分析はメリットだらけなのですが、最大のデメリットは労力がとてもかかるという点です。
産業保健師が抱える休職者分析の壁
メリットだらけの休職者分析ですが、最大のデメリットはとにかく労力がかかること。特に、こんな壁があります。
- データベースがゼロからになる:過去の診断書や人事記録を遡って休職開始日・復職日を調べるだけでも膨大な時間がかかる
- 過去数年分の洗い出し:何百人分のデータを手作業で確認することも。不整合があれば確認作業も発生する
- 1人職場の産業保健師には特に重い:収集・整理・分析をすべて1人で担うことになる
- 通常業務との両立が難しい:面談や書類作成、衛生管理と並行するので、作業期間が長引きがち
だからこそ、休職者分析をやると決めたら、企業や管理職に「これだけの作業量がある」と伝えて業務サポートをお願いするのも大事です。産業保健師が複数いる職場なら、1年単位のプロジェクトとして入力作業を分担するのがおすすめ。
そしてもうひとつ、労力を減らすコツは最初から「型」で回すこと。入力の項目・集計の定義・要因の分け方を最初に決めておけば、翌年以降はデータを足すだけで比較ができます。私が使っているテンプレートは、記事の最後でご案内しますね。



休職者分析の現実的な負担を把握し、休職者分析が必要な場合は企業や管理職に業務サポートの重要性を伝えるのも効果的ですね。
休職者分析の5ステップ
私が実践している流れを、5つのステップに分けて紹介します。
まずは分析の土台になるデータベースづくり。以下の情報を、集計しやすい形で1か所にまとめます。
- 基本情報:氏名(または匿名ID)、年齢、性別、入社年次、職種、部署
- 休職に関する情報:休職開始日、休職期間、復職日、再休職の有無
- 業務に関する情報:勤務時間、残業時間、業務内容、業績評価
- ストレス要因:業務負荷、職場環境(人間関係、ハラスメントの有無)、プライベートの状況
- 健康データ:診断名
健康管理システムでデータベース化する方法もありますが、従業員数4,000人以下くらいまでなら、Excelやスプレッドシートで管理して集計するほうが案外効率的です。


次に、厚生労働省や関連機関が公表している統計資料で、自社の業界・業種の平均値を把握します。
- 休職率
- 退職率(メンタル不調を理由とする退職率も含む)
- 復職率
- 再休職率
自社の数字が業界平均と比べて高いのか低いのか。これがわかると「うちは何が課題なのか」を語りやすくなります。
自社のデータを、3つの切り口で見ていきます。
時系列分析 休職者数の推移を月次・四半期ごとに確認し、増減の傾向と発生時期を把握します。「今休んでいる人の数(休職者数)」と「新しく休職に入った人の数(休職発生数)」は別物なので、両方見るのがおすすめ。繁忙期など特定の時期に発生が増えているなら、その原因を探ります。




あわせて退職者数と退職率も並べておくと、「休職→退職」の流れが起きていないかを確認できます。


属性別分析 年齢、性別、職種、勤続年数、部署ごとに休職率を比較して、リスクの高い属性を特定します。特定の部署に休職者が集中しているなら、その部署特有の業務負荷や環境の問題が考えられます。
私がよく見るのは「休職に入った時点の勤続年数」。入社から何年目で休職に入りやすいかがわかると、セルフケア研修やフォロー面談を入れるタイミングを決められます。


復職後の状況分析 復職後の職場定着率や再休職率を確認し、復職支援がうまく機能しているかを評価します。
面談記録などから休職に至った事由を洗い出し、カテゴリーに分けて集計します。私は、この5つに分けています。
- 業務要因:業務過多、長時間労働、仕事のプレッシャー
- 人間関係:ハラスメント、職場の摩擦
- キャリア:成長機会の不足、将来への不安
- 思考・性格の傾向:完璧主義、抱え込みやすさなど
- 健康・私生活:持病、家庭内のストレスなど
カテゴリごとに面談記録のキーワードをワードクラウドにしてみると、「何がしんどかったのか」が一目で伝わるので、報告のときにも重宝します。


分けたら、休職者の共通点やリスク要因を抽出して、次のステップへ進みます。
分析結果を、具体的な人事労務施策に落とし込みます。産業保健師が案出しをすることもありますが、人事労務の担当者と一緒に考えるのが大事。主な施策の例はこんな感じです。
- 業務負荷の見直し:高負荷の部署・職種での業務分担や自動化の検討、残業時間の削減
- 職場環境の改善:リーダーシップ研修・コミュニケーション研修、ハラスメント防止策の強化と相談窓口の周知
- メンタルヘルス対策の強化:ストレスチェック結果に基づくフォローアップ、カウンセリングや産業医面談の活用促進、研修・セミナー
- 復職支援の充実:復職後の産業保健師によるフォロー面談、復帰前のリワークの提案
施策を入れたら、定期的に効果を測る。ここまでが1セットです。
結果の見せ方で、動き方が変わる
同じ分析結果でも、見せ方で相手の動き方が変わります。私が意識しているのは次の3点。
- 報告は集計値だけ:個人が特定されないよう、該当5名未満の区分は他の区分とまとめる
- 経営層には「率」で:休職率・再休職率のように、他社や前年と比べられる数字で
- 人事には「要因」で:どのカテゴリが多いかがわかると、施策の話にすぐ入れる。ワードクラウドのような「見てわかる」形も効果的
まとめ
休職者分析の経緯、目的、ステップ、結果の活かし方をお話ししました。
分析結果は、セルフケア介入のタイミングやマネジメント上の課題を特定するのに役立つだけでなく、組織全体の健康管理や人事労務施策への展開にもつながっていきます。
休職者分析は労力がかかります。でも、やることで会社全体の健康課題の解決につながります。最初は反応ゼロでも、頭出しした種はどこかで芽を出す。私はそう信じて続けています。
この記事で紹介した流れをそのまま回せる、スプレッドシートのテンプレートを、産業保健師ラーニングで配布しています。
・休職者分析テンプレート(Googleスプレッドシート・コピーしてそのまま使えます)
1エピソード=1行で入力すると、休職日数・再休職の自動判定・休職率/再休職率のダッシュボードが自動で出ます
・「どこまでを休職として数えるか」の集計定義
・5つの要因カテゴリの定義とキーワード例
・人事・経営層への報告の出し方
初回登録から30日間無料/月980円(税込)/いつでも解約OK
※すでに会員の方はこちらから直接読めます



「分析のやり方はわかったけど、ゼロから作るのはしんどい」という方は、ぜひ使ってみてください。
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一緒に成長していきましょう!


\ 産業保健師の実践力を鍛える/
最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!


永松希望(ながまつ のぞみ)
- 新卒から産業保健師ひと筋16年(産業医科大学 産業保健学部卒)
- 産業保健体制の立ち上げ支援4社/育成プログラム約20名に提供
- 実務相談・転職相談 のべ50名以上
- IT・製造・小売・物流・金融・調剤など多業種で産業保健サービスを提供中









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