【調査レポート】産業保健師27名が答えた「長時間労働者フォロー基準」の実態(2026年5月実施)

こんにちは、産業保健師の永松希望です。



このたび、Instagramでご縁のある産業保健師の皆さまにご協力いただき、「長時間労働者へのフォロー基準」に関する実態調査を実施しました。



27名の貴重なご回答から見えてきた、現場のリアルな運用と工夫をレポートにまとめましたので、ぜひご覧ください。

SURVEY REPORT / みらいCARE

長時間労働者フォロー基準 実態調査レポート

産業保健師27名の声から見える、現場のリアルと運用ヒント集

調査期間:2026年5月 回答数:27名 調査主体:みらいCARE

01はじめに

長時間労働者へのフォローは、安衛法上の義務である一方で、その運用は企業ごとに大きく異なるのが実情です。

本調査は、Instagramを通じてご縁のある産業保健師の皆さまにご協力いただき、長時間労働者へのフォロー基準・実施内容・課題を可視化することを目的に実施しました。27名の貴重なご回答から見えてきた現場のリアルと、明日から使える運用のヒントをまとめています。

02回答者プロフィール

27
回答者数(名)
22
企業内産業保健師
13
製造業(最多業種)
24
300人以上の企業

関わっている企業規模

300〜999人
10
37%
1,000〜2,999人
9
33%
3,000人以上
5
19%
50〜299人
2
7%
複数企業
1
4%

主な業種(複数回答可)

製造業
13
48%
物流・運輸
3
11%
小売・サービス
2
7%
IT・通信
2
7%
金融・保険
2
7%
建設・不動産
2
7%
医療・福祉
1
4%
その他
2
7%
サマリー:300人以上の企業の産業保健師が中心に回答

本調査の回答者は300人以上の企業に関わる方が約89%を占めており、ある程度の体制構築が進んでいる企業のリアルが集約されたデータです。製造業が約半数を占めるため、製造現場ならではの示唆も多く含まれています。

03フォロー基準の明文化の実態

Q. 長時間労働者へのフォロー基準は社内で明文化されていますか?

明文化されている
18
67%
慣例的な基準がある
4
15%
現在整備中
3
11%
基準はなく都度判断
1
4%
わからない
1
4%
明文化されていても「運用は十社十色」

明文化率は67%と比較的高い一方で、何時間から何を実施するかは企業によって大きく異なります。明文化=統一されたフォローではなく、「自社にとって最適な基準を設計できているか」が運用の質を左右しています。

04フォロー対象とする時間基準

Q. 長時間労働者としてフォロー対象にしている時間基準(複数回答可)

月45時間超
13
48%
月80時間超
11
41%
本人からの体調訴え
6
22%
上司・人事から相談
5
19%
月60時間超
4
15%
2〜6か月平均80h超
4
15%
月100時間超
3
11%
「月45時間超」が最多、「月80時間超」が次点

法令対応の最低ラインである月80時間超だけでなく、約半数の企業が月45時間からアクションを開始しています。「早期に動く」企業ほど産業保健職の関与度が高く、メンタル不調や離職の予防につながる傾向が見られます。

05時間基準ごとの対応パターン

時間基準ごとに、各社が実施している主なアクションを集約しました。自社の運用と見比べる際の指標としてご活用ください。

時間基準主な実施アクション(採用率の高い順)
月45時間超本人への労働時間通知/疲労蓄積度チェック実施/保健師面談を案内
月60時間超本人への通知+疲労蓄積度チェック/保健師面談の原則実施/翌月以降の継続確認
月80時間超産業医面談を原則実施/疲労蓄積度チェック/人事・労務への共有/残業制限・就業配慮の検討
月100時間超産業医面談を原則実施/業務調整・残業制限の発動/継続フォロー
連続超過時翌月以降の継続確認/産業医面談へのエスカレーション
本人訴え時保健師面談を案内・原則実施/必要に応じ産業医面談
「通知 → チェック → 面談 → 共有 → 翌月確認」が標準フロー

多くの企業で①本人への通知、②疲労蓄積度チェック、③保健師・産業医面談、④人事への共有、⑤翌月以降の継続確認という5ステップが標準的なフローとして運用されています。

06保健師が面談で確認している内容

Q. 長時間労働者フォローで保健師が確認している項目(n=27)

睡眠時間
21
78%
疲労感
21
78%
睡眠の質
20
74%
食欲・体重変化
20
74%
気分の落ち込み・不安
20
74%
集中力低下・ミス増加
19
70%
業務量・業務内容
18
67%
「睡眠・疲労」が最重要視されている確認項目

確認項目の上位を占めるのは睡眠時間・疲労感・睡眠の質・食欲・気分といった、長時間労働の影響が最も早く現れる健康指標です。これらをチェックリスト化し、保健師面談の「最低限の標準項目」とすることで、フォローの質を均質化できます。

07現場が感じている課題

Q. 長時間労働者フォローで課題に感じていること(複数回答可)

保健師がどこまで関与すべきか迷う
15
56%
本人が面談を希望しない
11
41%
人事・労務との役割分担が曖昧
8
30%
事後措置につながりにくい
9
33%
法令対応と健康支援の線引きが難しい
6
22%
上司による業務調整につながりにくい
6
22%
最大の課題は「役割の曖昧さ」

「保健師がどこまで関与すべきか迷う」(56%)、「人事・労務との役割分担が曖昧」(30%)、「法令対応と健康支援の線引きが難しい」(22%)といった、役割設計に関する悩みが突出しています。

08「これは効果的だった」現場の工夫

回答者から寄せられた、運用面で効果を実感されている具体的な工夫を抜粋しました。

CASE 01 ─ 硬さを和らげる声かけ

産業医面談という堅苦しい雰囲気ではなく、「何か困り事はないか?」くらいの視点で70時間以上の対象者に案内している。必ず、上司に直接意見書を渡しに行って、部下の様子を共有するようにしている。

CASE 02 ─ 本人の気づきを促す

疲労チェックを行うことで残業することにリスクがあることを理解してもらえ、翌月は少し残業時間を抑えようという気持ちになると言っていました。

CASE 03 ─ 自己申告と実態のすり合わせ

保健師・産業医面談前に人事から業務状況や毎日の勤怠情報を共有してもらうことで、本人の自己申告と現状の乖離に気づいて対応できている。

CASE 04 ─ 回答率100%を実現した質問票運用

以前は保健師からだけのメールでの連絡であったが、人事と所属長を介して本人への通知と、疲労蓄積度チェックに身体症状・精神症状をプラスした質問用紙を作成し、対象者にメールで配信することで対象者からの回答率は100%となった。

09自社の運用を見直す3つの視点

調査結果を踏まえ、自社の長時間労働者フォロー運用を見直す際にチェックしたい3つの視点を整理しました。

STEP 1時間基準は「複数段階」になっているか

月80時間超だけでなく、月45時間・60時間など早期段階のアクションを設計することで、メンタル不調や離職の予防につながります。

月45時間:本人通知+疲労チェック月60時間:保健師面談を案内月80時間:産業医面談を原則実施

STEP 2「誰が何をするか」が明確になっているか

最大の課題は役割分担の曖昧さでした。各ステップの責任者を明確に定義することで、運用がスムーズになります。

人事:対象者抽出・通知所属長:本人への声かけ・業務調整保健師:面談・ゲートキーパー産業医:医学的判断・就業判定

STEP 3面談後の「事後措置」まで設計されているか

「事後措置につながりにくい」課題は33%が抱えています。面談で終わらせず、翌月以降の継続確認・上司への業務調整依頼・衛生委員会での共有まで運用に組み込むことが重要です。

翌月以降の労働時間確認残業制限・就業配慮の検討衛生委員会での実績共有

📌 調査からの主要メッセージ

フォロー基準は明文化されていても運用は十社十色。「自社にとって最適か」を問い直す視点が重要です。

月45時間からの早期アクションを取り入れる企業が増加しています。80時間超だけでは予防が遅い可能性があります。

最大の課題は「役割分担の曖昧さ」。基準よりも先に、「誰が何をするか」の合意形成が必要です。

効果的な工夫の多くは「人事・上司・保健師の連携強化」に集約されます。保健師単独ではなく、組織全体での仕組み化がカギです。

本レポートはみらいCAREが実施した産業保健師アンケート(n=27)に基づき作成しています。
回答者の個人情報・所属企業名は一切公開していません。
©︎ 2026 みらいCARE / 産業保健師 永松希望

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

このレポートが、皆さまの現場での対応や運用の見直し、人事労務担当者への提案のきっかけになれば嬉しいです。

ご感想やご意見、自社での取り組みのシェアなど、Instagram(@sangyo_hokenshi_nanon)のDMでお気軽にお寄せください。

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