社員の心を動かす“保健指導の第一歩” 思考のくせを整える3ステップ

こんにちは!産業保健師のなのんです。
毎日の面談で、社員さんが “同じような悩み” を何度も語り、ぐるぐると思考の迷路にハマっている姿を見たことはありませんか?

従業員Aさん

どうせ何をしたってチームは変わらない

従業員Bさん

こんなに頑張っているのに評価されないっておかしい

こうした“行き詰まり”を生む元凶が 思考のくせ(自動思考のパターン)です。
思考のくせに気づき、思考のくせに応じた対処法を取ることで、感情も行動もスルッと前に進み、前向きな行動変容を促すことも可能です!

本記事は、思考のくせの7つのタイプの特徴をベースに、保健師面談の現場で今日から使えるワークや保健指導の仕方を徹底解説しております!

本記事を読んだ後に得られるスキル

読み終える頃には、、、

  • 保健師自身の思考のくせがわかる
  • 相談者(従業員)の思考のくせをスッと見抜く
  • タイプ別に”前向きな行動変容を促す”声かけのコツがわかる

そんなスキルを得ることができ、日々の保健指導でも大活躍してくれると思います!
思考のくせを理解し、保健師面談で活かしていきましょう!

\本気で産業保健の実践力を鍛えたい人におすすめ/

目次

思考のくせとは何か

思考のくせとは、出来事に直面した時に頭に浮かぶ考えや解釈です(自動思考のパターン)

いわゆる「自動思考」と呼ばれるもので、その人の物事の受け取り方のクセが表れます。例えば「自分はダメだ」「また失敗するに違いない」「相手はきっと自分をバカにしている」など、瞬間的によぎる考えです。この考え方次第で後の感情や行動が大きく左右されます。

思考のくせに関する具体的な詳細は、こちら👇

思考のくせへの介入効果:メンタル不調の “沼落ち” を防ぐ

保健師が、保健指導の中で、相談者(従業員)の「思考のくせ」に光を当てることで、早期介入によるメンタル不調の“沼落ち” を防ぐことができます。

保健師が「思考のくせ」に介入する必要性

相談者(従業員)に短な存在である保健師。
保健師だからこそ、ちょっとした会話の中で思考のくせをチェックし、会話の中で気づきを促すことも可能です!

なぜ保健師が“思考のくせ”を見るのか
  • 症状だけ追うより、解釈の偏りを整えた方が再発予防に直結
  • 身体面のアドバイス(睡眠・運動)と組み合わせると相乗効果◎
  • 早期に寄り添うことで「相談しやすい窓口」 という信頼が高まる

保健師面談や保健指導での介入の効果と介入方法例

視点効果保健師の介入方法例
一次予防思考のくせのセルフチェックを習慣化し、不調の芽を小さいうちに摘む保健師便りによる情報提供
セルフケア研修やワークショップ
二次予防保健師面談で負の連鎖を遮断タイプ別声かけと個別の保健指導による思考のくせ修正支援
ストレスチェック後の保健師面談
三次予防復職後の再発防止プログラムに応用復帰後フォロー面談による保健指導
完璧主義や他責思考などみられる場合には、休職中にフォロー
なのん

どの時期でも思考のくせへの介入は効果的!

では、次に代表的な7つの思考パターンを見ていきましょう!

思考パターン7タイプ!徹底ガイド

思考のくせの代表的なタイプは、こちらの7つです!

各タイプの特徴・出やすい感情・口癖・強み・落とし穴・介入のカギを整理する前に、前提として以下の3つの心得を理解しておきましょう!

7タイプを扱う前に押さえておきたい3つの心得

心得
ラベリングは“烙印”ではなく“ナビゲーション”

「批判タイプ」「負け犬タイプ」と名前をつけると、つい「ダメな人」「ネガティブな人」を決めつけたくなります。しかし大切なのは、あくまで“今どんな思考パターンが働いているか”を示す地図のようなものと捉えること。

目的:本人と保健師が共通言語を持ち、「今ここ」を確認しやすくする。
注意点:ラベルを貼られた瞬間に本人の自己肯定感を下げないよう、必ず「長所の裏返し」や「誰にでもある反応」であることを添える。

なのん

私は、脳に思考パターンのゾウさんが住み着いているだけで、
手なづけることも可能です!
っと伝えています!

心得
どのタイプも“長所の裏返し”

思考のくせは、もともとは自分や組織を守るために身についた“心のツール”です。

  • 批判タイプ → 細かい点まで見落とさない ✔︎品質管理に強み
  • 正義タイプ → 公平性を重んじる ✔︎コンプライアンスや倫理観の担い手
  • 心配タイプ → 潜在的リスクを先に察知 ✔︎未然防止能力が高い …など、適度に発揮されると組織にとっても貴重な資質。

くせを扱う際は、まずその“良さ”に注目し、「それが強すぎると苦しくなる」という視点で整えていくと本人も受け入れやすくなります。

心得
強すぎれば不調に向かい、適度ならパフォーマンス源

どのタイプにも「適正な度合い」があります。度を超すと感情や行動が行き過ぎてしまうため、保健師の介入では“ちょうどよいバランス”を目指します。

度が強すぎる:批判タイプが100点満点まで追い求める → 完璧主義で燃え尽き、対人関係が悪化適度に発揮できる:60~70点を基準にしながら改善を続ける → 継続的な品質向上とチームビルディング
度が弱すぎる:批判する視点が乏しい → 問題点を見落としてリスク管理が甘くなる

その人にとっての“ゴールドilocksゾーン”(暑すぎず寒すぎずちょうどいい温度帯)を探るように、介入時には「もう少し」「ちょっと控えめに」といった微調整を意識しましょう。

なのん

適正な度合いとしては、6割くらいがベスト!

思考のくせパターン解説!7つのタイプの特徴や介入法

各タイプの特徴や介入法を学ぶと、より的確かつ本人に寄り添った支援ができるようになりますので、ここからはそれぞれの詳細を見ていきましょう!

批判タイプ(白黒思考・怒り系)

項目内容
思考の特徴白黒思考
でやすい感情怒り、不満
観察キーワード指摘が多い・完璧を求める・他人のミスに厳しい
典型口癖「何度言ったら…」「常識でしょ!」
強み正確さ・品質へのこだわり
落とし穴他責&完璧主義 → 周囲の萎縮・孤立
介入キー“グレーの許容”・深呼吸で緊張をほぐす・「80点でも進めばOK」と目標設定を緩める
批判タイプ

批判するゾウ!!目標は高く、完璧にしちゃうぞう!

なのん

落ち着いて落ち着いて〜

正義タイプ(べき思考・憤慨系)

項目内容
思考の特徴べき思考
でやすい感情嫌悪、憤慨、嫉妬
観察キーワード道理に厳しい・規範意識が強い
典型口癖「上司ならこうするべき」「〜すべきでしょ!」
強み公平感・倫理観
落とし穴固定観念 → 頑固さ・周囲への評価不満
介入キー自己/他者への思いやり拡大・「皆ちょっとずつ違う」を共有・柔軟な選択肢を一緒に考える
正義タイプ

悪いところは、成敗成敗!

なのん

みんな違ってみんないい!
自分にも少し優しくでいいよ〜

負け犬タイプ(減点思考・落ち込み系)

項目内容
思考の特徴減点思考
でやすい感情悲哀、憂鬱感
観察キーワード自己評価が低い・控えめ
典型口癖「自分なんて…」「どうせ無理だし…」
強み向上心・謙虚さ
落とし穴自己肯定感↓ → 回避・表舞台から退く
介入キー加点視点・成功の“ミリ”を探して言語化・小さな達成感を可視化
負け犬タイプ

負け犬なのに、ゾウ。
どうせ、ダメダメな負けゾウだ、、

なのん

今日は、○○ができたじゃない!
OK OK

諦めタイプ(無力思考・無気力系)

項目内容
思考の特徴無力思考
でやすい感情不安、憂鬱感、無力感
観察キーワード何事にも乗り気でない・諦めが早い
典型口癖「どうせ無理…」「また失敗するし…」
強み現実的・リスク察知が早い(行き過ぎるとネガティブに)
落とし穴意欲低下 → 行動停止・チャンスを逃す
介入キーコントロール可能領域の発見+スモールステップ課題・「まずはこれだけやってみよう」を設定
諦めタイプ

どうせ、、できないしなあ

なのん

1週間前と比べるとできたことあるよね!
小さく小さくできることを積んで行こう!

心配タイプ(不安思考・恐れ系)

項目内容
思考の特徴不安思考
でやすい感情不安、恐れ
観察キーワードリスクを過大評価・未来の不安が強い
典型口癖「失敗したらどうしよう」「悪い方向しか考えられない」
強み潜在的リスク察知・予防力
落とし穴過剰な不安 → 決断回避・過剰準備
介入キー“今・ここ”への意識集中・未来シナリオの確率評価表活用・呼吸リセットで現在へのフォーカス
心配タイプ

大丈夫かなあ、心配だなあ。

なのん

不安が出てきたら、「今できること」に集中してみよう!

謝るタイプ(自責思考・罪悪感系)

項目内容
思考の特徴自責思考
でやすい感情罪悪感、羞恥心
観察キーワード自分を責める・他人の感情を背負いやすい
典型口癖「全部私のせいかも…」「申し訳ないです」
強み責任感・共感力
落とし穴過剰な自己責任 → 燃え尽き・慢性的ストレス
介入キー事実/解釈の分離+セルフコンパッション・「事実だけ見る」「解釈は後で検証」をセットで実施
謝るタイプ

私がこれをしてしまったせいで、、、

なのん

不安が出てきたら、「今できること」に集中してみよう!

無関心タイプ(回避思考・倦怠系)

項目内容
思考の特徴回避思考
でやすい感情疲労感
観察キーワードモチベーション低下・興味関心の薄さ
典型口癖「別に…」「どうでもいい」
強み無駄を省く・割り切りが早い
落とし穴回避傾向 → チャレンジ機会の喪失
介入キー小さな選択肢 × 安心感の場づくり・「AかBか選ぶ」形式で関与を促す
無関心タイプ

もうどうでもいいなあ、、、

なのん

無駄かも、、っと思うことも一回だけ
チャレンジしてみて判断するのもいいかもですね

もう一度、7つの思考パターンを知りたい方は、以下のタイプ別ゾウさんをクリックしてみてね

これら7つの思考パターンを理解し、場面に応じて使い分けることで、単なる「アドバイス」ではなく、相手の内部で起きている自動思考の“くせ”自体に働きかける保健指導が実現します。

例えば、批判タイプの社員には「80点でも前進です」と緩やかな基準を提示し、正義タイプには「みんな違って当たり前」と視野を広げる問いかけを行う――そんな小さなひと工夫が、相手の受け取り方や行動の選択肢をぐっと広げることが可能になります。

また、保健指導の際は「私はこう思う」という一方的な押しつけではなく、「今どんな声が頭に浮かんでいますか?」「それをほんとうの事実だけで見るとどうですか?」と対話を通じて“自分で気づく”プロセスを大切にしましょう。そうすることで、社員自身が「自分の思考パターンに自分で気づき、セルフコントロールできる力」を身につけ、再び同じ“沼”に落ちるリスクを大幅に減らせます。

このように、7タイプをナビゲーションとして活用しながら、相手のペースに合わせた声かけやワークを組み合わせることで、より深く丁寧な保健指導が行えます。

自分(相手)の思考のくせを見つける3ステップ

思考のくせを見つけるには、次の3つのステップを “体験→言語化→分類” の流れで行います。
各ステップで使えるワークシート例もご紹介しますので、ぜひダウンロードして現場でお試しください!

STEP
ストレスを感じた体験を書き出す

ストレスを感じた“現場の状況”を、頭の中ではなく紙の上に具体化する。

やり方
  • 面談や自己セルフチェックで、直近でネガティブ感情が出たシーンを思い出す
  • 「いつ・どこで・誰と・何をしていたとき?」を 5W1H のフォーマットに沿って記入
  • 感情メーター(0〜10)で、そのときの感情の強さを数値化

思考のくせを見つける診断ワークシートを活用すると便利!!

思考のくせを見つける診断ワークシートは👇からダウンロードしてみてくださいね!

感情メーター(0〜10)は以下を参考に数値化してみてください!

STEP
つぶやきをキャッチ

“自動的に浮かんだ言葉”をキャッチして、思考のパターンをつかむ。

つぶやきのキャッチの仕方
  • Step 1 を見ながら、該当場面で頭に浮かんだ “心の声” を書き出す
  • つぶやきが複数ある場合は、出現頻度の高いものから優先的に記録
  • 一つの場面で混在していたら、別々にそれぞれ記入すると判別しやすい
STEP
7タイプに当てはめる

書き出した“つぶやき”が、どの思考パターンに近いかを分類し、介入のヒントを得る。

思考のくせ7つのタイプを把握するやり方

思考のくせを手なづける!具体的ステップ

思考のくせによる役に立たない行動をとってしまうことを防ぐためには、思考のくせを手なづけることが大事です。
次に、面談現場ですぐ試せる3つのステップをご紹介します。

STEP
気づく 自動思考を言語化して“見える化”

先ほど、ご紹介した思考のくせを見つける3ステップセルフモニタリングの技術を行い、自動的に浮かび上がった思考を見つけます。

セルフモニタリングの技術はこちらをご参考に!

STEP
修正 “優しいセルフツッコミ”で事実と解釈を切り分ける

「それは本当に確定した事実ですか? それとも、頭の中の解釈でしょうか?」とソフトにツッコミ。

自分1人では事実なのか解釈なのかがわからなくなることもあるため、保健師が一緒にワークを行いながら、事実と解釈を分ける作業を行ったり、1人でやる場合は、チャットGPTに聞くこともおすすめ。

STEP
成功体験 小さな行動実験で“変化できる感覚”を実感

優しいセルフツッコミの解釈を使って、小さな行動を変えていく。

おすすめは、認知行動療法の行動活性化法を使い、行動を変えていくこと!小さな成功体験を積み重ねて、自己効力感を育てることができます。

行動活性化法はこちら

まとめ

いかがでしたか?

今回は、思考のくせの特徴や思考のくせを手なづける3ステップについて解説していきました。

産業保健師として、社員さんの“思考のくせ”に働きかけることは、単なるアドバイスではなく、根本的な支援になります。本記事の思考のくせの特徴や思考のくせを手なづける3ステップを意識して、正のスパイラルを生み出しましょう。

本記事のまとめ
  • “解釈”を扱うことで感情の暴走を防ぐ:事実と解釈を分けることで、過度な不安や落ち込みを鎮静化。
  • 小さな成功が正の連鎖を生む:行動→フィードバック→自己効力感のサイクルが、レジリエンス強化に直結。
  • 本人主体の気づきを促す:一方的な指導ではなく、対話を通じた内省が深い学びを生む。
なのん

日常の保健指導に取り入れて、社員さんとともに“思考のくせ”を味方につけましょう!

産業保健の実務に関するお悩みがある方は、育成プログラムに参加することで新たな気づきや解決のヒントが得られます。みんなと一緒に成長していきましょう!

産業保健師に必要な実践的スキルを身につけよう!

産保ゆめUPスクールでは、産業保健師の基礎的な実践力を鍛える産業保健師育成プログラムサービスをご提供しています。

産業保健師に必要なスキルや基礎知識、企業で働く上での考え方を網羅し、実践力を鍛え、産業保健師としての成長と自己実現につながる講座となっています。

一緒に成長していきましょう!

\ 産業保健師の実践力を鍛える

最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!

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