産業保健師が理解しておくべき「役員の定期健康診断」徹底解説

こんにちは、産業保健師のなのんです。

産業保健師のみなさんが所属する会社の役員や社長は、健康診断を受けていますか?
多くが「役員には人間ドックを受けてもらっています」っという場合が多いのではないでしょうか。
そんな産業保健師さんの中には、こんな悩みや疑問はありませんか?

産業保健師3年目

取締役が忙しすぎて健診に行ってくれません。。。。

産業保健師2年目

要精密判定が出ていたため、受診勧奨をしたいのですが、そもそも受診勧奨しても良いのでしょうか?

産業保健師1年目

役員が受診しなかった場合、法令違反になるんでしょうか?

なのん

役員の健康管理について疑問に思われている点は素晴らしいです!

トップの健康リスクはそのまま経営リスクに直結します。「忙しくて健診に行けない」「要精密なのに再検査を後回し」――経営トップが倒れれば、株価・取引先・従業員…影響は連鎖的に広がる可能性があります。

とはいえ、役員・社長は“労働者”ではなく、産業保健師がどこまで介入して良いのか悩ましいのも事実。だからこそ 「正しい知識 × 実践的なアプローチ」 が欠かせません。今回は、役員/経営層とは誰を指すのか、法的な受診義務、役員の健康管理のポイントをご紹介いたします。

この記事で学べる3つのこと
  • 役員の健康管理の考え方がわかる。
  • 会社と役員を同時に守る現場ノウハウを具体的に学べる。
  • 現場で“つまずきやすい質問”への答えが丸ごと理解できる。
この記事を書いた人
nanon
産業保健師なのん
  • 新卒から産業保健師歴約15年
  • 産業保健師としての企業での活動実績
    • 産業保健体制の立ち上げ支援 4社
    • オンライン健康セミナー 約10回/年
    • メンタル&フィジカルの保健師面談 約30件以上/年
    • 営業職・研究職・臨床検査職・事務職・配達業務職・小売業・物流センター・製造業・金融業・IT企業など様々な職種の従業員に対して産業保健サービスを提供

基礎から実践まで、“できる産業保健師”を育成!

目次

役員/経営層とは?

組織としての意思決定を⾏ったり、組織全体の資⾦配分を⾏ったり、⼀般的に企業経営の責任を持つ集団のこと。(MoneyForwardクラウド会計設立)

代表取締役(社⻑)だけでなく、経営に携わる役員=経営層とする定義が⼀般的。役員は会社法では、取締役・会計参与・監査役・常務や専務、執⾏役員があり、代表取締役を含めて上記の⽅々が役員/経営層になリます。

なのん

会社によって経営層と呼ばれる範囲や呼び名は変わってくるため、必ず誰が経営層なのかを確認しましょう!

役員/経営層の法的な受診義務について

役員/経営層/代表取締役など“事業主”に当たる役員の定期健康診断などの⼀般健康診断の受診義務はありません。ただし「労働者性のある役員(例:常務取締役兼工場長)」は義務の対象になるため要確認が必要になります。

しかし、一般健康診断の受診義務はありませんが、過去に自社で粉塵作業を行なっていた方や特殊健康診断のうち過去従事者健診に該当する物質の取り扱いがあった方は該当の健康診断を受けさせる必要があります。

厚生労働省 じん肺に基づく健康診断について参考資料
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0721-7b5.pdf

厚生労働省 過去従事者健診についての参考資料
https://www.zeneiren.or.jp/cgi-bin/pdfdata/20141107_tokuteika.pdf

役員/経営層の健康管理のポイント3選

Point
会社としてのリスク管理の視点で実施する

経営層の⽅々は重たい責任を担う重要な業務に当たっているため、健康上の理由で仕事ができなくなった場合に本⼈及び会社の損失は⼤きいため、「受診、健康管理」を行うことを関係者(秘書等)及び役員/経営層へ浸透させる。

Point
お願いベース+支援パッケージ
  • 会社への結果の提出と健康上の懸念が確認されたら、健康管理として産業医⾯談や保健師⾯談を受けていただきたいっというお願いベースで健康診断の受診と健康⽀援をセットでお願いすること。
  • 健診予約 → 結果提出 → (必要があれば)産業医/保健師面談まで秘書や役員担当者と協同し、会社が手配。
  • 再検査や生活改善プランも「会社サポート」として提示。
Point
役員健康管理規程を策定
  • “受診方針・対象範囲・費用処理・再検査フロー” を明文化。
  • 担当者が替わってもブレない運用基盤をつくるために規程を社内ポータルに掲載し、毎年レビュー & 改定

現役産業保健師さんへ聞いた!『役員の健康管理』についてアンケート調査

Instagramのフォロワー様で現役産業保健師さんから「役員の健康管理」についてご協力をいただきました!(n=約40名)

  • 人間ドックor定期健康診断の受診までを行なっている 10%
  • 受診から結果の提出まで行なっている 15%
  • 受診から結果の提出、必要時に再検査の受診勧奨まで行なっている 49%
  • 実態がわからない 26%

っという結果になりました。結論としては、約半数の企業様は、従業員同様に役員も「受診→結果の提出→(必要時)受診勧奨」まで健康管理をしっかり行なっていることがわかりました!

2025年7月22日時点のアンケート調査
産業保健師1年目

役員の健康管理について考えたことなかったです。実態を把握してなかったので、お恥ずかしいです。

なのん

大丈夫ですよ!これを機会に上司へ確認してみましょう!役員の健康管理の考え方は企業様によって違ってきますので、まずは現状把握から始めてみましょう!

よくある質問 Q&A

「法令上の義務が無いのに、なぜ受診しなければ?」と強い口調で言われました。

トップが倒れた場合の経営的なダメージを説明し、情に訴えると良いです。また、“会社方針” として役員健康管理規程に明文化しておくと、「任意→社内ルール」へ格上げでき、受診の必要性を理解してもらいやすくなります。

なのん

私自身、これまで担当した2社で役員・経営層から「受診拒否」を経験しました。新人の頃は“お願いベース”で情に訴えて説得しましたが、今は「健康経営を掲げる企業だからこそ、役員も率先して受診してください」と会社の方針と経営リスクの視点で伝えるようにしています。

労働者性(受診義務の有無)の線引きは?

代表取締役・非常勤取締役 → 事業主扱いで受診義務なし。常勤・指揮命令下で働く役員(例:工場長兼取締役)→ 労働者性が認められる余地があり、安衛法66条が適用される可能性はゼロではない。そのため、グレーな場合は社労士/所轄労基署に確認しておくと安全です。

役員の健診費用は会社負担?

従業員と同等メニュー・一律条件 なら福利厚生費として会社負担が一般的。役員の人間ドックについては、会社負担にしているところが多い傾向であるが、会社によって異なるため、確認が必要。

要精密検査の項目があった場合、受診勧奨して良い?

まずは、保健師の直属上司へ相談し秘書と連携し、リスクを説明。上司または秘書名義で「再検査のご案内」文書を送付(メール or 手紙)。

なのん

役員の健康管理は、役員の秘書さんや役員担当者との協働が重要になりますね!

ITベンチャー企業の産業保健師です。昨年役員から一般社員に降格した方が「役職で命の重みを決めるのか」と不満を漏らしています。

健診目的の違い(役員の健康診断=経営リスク管理、従業員の健康診断=法令遵守、自己保健義務の履行)を説明し、ご理解いただくよう説明する。一時的な対応として、オプション選択制の提案(希望者は自己負担か部分補助で人間ドックを追加できる制度を検討すると不公平感を緩和)を行う。 この機会に健診区分・補助範囲など制度全体を棚卸しを行い、検討を行う機会を設けるなど納得感と透明性が向上します。

なのん

こちらは私が実際にフリーランス産業保健師になって体験したことなのですが、役員側の内容が圧倒的に手厚く、しかも対象は30代の若手役員。従業員が感じる“不公平感”もよく分かり、制度のあり方を考えさせられました。

役員の人間ドックの結果を提出してくれません。どうすれば良いでしょうか?

役員健康管理規程に“結果提出”を明記し、秘書や上司経由で提出してもらうようにしましょう。

まとめ

経営トップの健康は、そのまま会社の存続に直結することもあります。
① リスクを数字で示し「受診=投資」と捉えてもらう② 健診予約から産業医面談までワンストップで整える③ 役員健康管理規程を整備し毎年ブラッシュアップする——この3ステップが、忙しい役員にも負担をかけず健康管理を浸透させる鍵です。加えて、労働者性の線引き・再検査フォローなどのQ&Aを押さえておけば、現場での迷いも最小限に抑えられます。

“数字で語り、仕組みで守る”アプローチで、 会社と役員双方のリスクをゼロに近づける 一歩を、今日から踏み出しましょう。

📌 この記事が参考になったら、ぜひ保存&シェアで周りの産業保健師の仲間にも届けてくださいね!

最後に ― 一緒に学び、実践しよう!

ご覧いただきありがとうございました!
産業保健師の役割や業務に悩んでいる方は、私が主宰する産業保健師育成プログラムで気づきのヒントを得られるかもしれません。

  • 受講中に現場で起こっているお悩みをケーススタディとして検討
  • 先輩保健師とのグループディスカッションで視野を拡大

育成プログラムを受講することで、解決の糸口が見つかることも!みんなと一緒に成長していきましょう💪

産業保健の実務に関するお悩みがある方は、育成プログラムに参加することで新たな気づきや解決のヒントが得られます。みんなと一緒に成長していきましょう!

産業保健師の実践的スキルを身につけよう!

産保ゆめUPスクールでは、産業保健師の基礎的な実践力を鍛える産業保健師育成プログラムサービスをご提供しています。

産業保健師に必要なスキルや基礎知識、企業で働く上での考え方を網羅し、実践力を鍛え、産業保健師としての成長と自己実現につながる講座となっています。

一緒に成長していきましょう!

\ 産業保健師の実践力を鍛える

最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!

この記事を書いた人
nanon
産業保健師なのん
  • 産業保健師の転職から成長までトータルサポート!
  • 産業保健師の転職支援の実績
    • 延べ約50名の転職相談を担当し、内定率90%を達成
    • 履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ支援により、書類通過率90%
    • 模擬面接+フィードバックにより、「自信を持って面接に臨めた」と高評価
  • 産業保健師の実務相談および育成プログラムの実績
    • 個別実務相談(事後措置・休復職支援など)を約10名分実施
    • 「入門コース」(5名)→「実践コース」(11名)の育成プログラムを提供
    • 産業保健師向け勉強会(つながる産保カフェ)を毎月開催し、延べ参加者数30名以上、「勉強になった」「新しい視点を得られた」と高評価
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次