迷わない!産業保健師のための業務分担完全ガイド
こんにちは!産業保健師のなのんです!
産業保健師の半数以上がひとり職場で勤務することになるのですが、複数産業保健師が所属する会社もあります。
その中でもこれから産業保健師の人数が増える産業保健体制の構築期に携わる産業保健師さんは、産業保健師間の業務分担というのは重要なテーマになってきます。
産業保健師2年目の方からこんなご相談をいただきました。
産業保健体制をこれから構築していく時期である会社で産業保健師をしています。産業保健師の人数も増えてきて、産業保健活動をグループ会社毎や部門毎などの組織別担当制がいいのか、メンタル対応やフィジカル対応などといった専任業務担当制がいいのか悩んでいます。
なのんさんのご意見をいただけると幸いです。
悩ましいですよね。私も会社に所属して統括的な立場の産業保健師だった頃は、産業医と色々お話ししながら、担当業務についてあーだこーだ話していたのを覚えています。
業務をどう割り振るかによって、効率や従業員へのサポートの質、そしてご自身の成長にも大きく影響します。産業保健の体制構築に役立つ知識をお伝えするため、”組織別担当制(組織別に分ける方法)”と”専任業務担当制(業務内容ごとに分ける方法)”のメリット・デメリットをわかりやすく解説し、最後に私だったらどうするのかという視点で実践的なアドバイスいたしますね。
組織別担当制の業務分担
組織別担当制とは、グループ会社単位や部門単位、部署単位で担当を割り振る場合を言います。
組織別担当制の業務分担のメリット
組織分担担当制には、以下のメリットがあります。
担当の組織を深く理解した産業保健活動が可能
各産業保健師が特定のグループ会社や部門を担当することで、その組織の文化や仕事内容・特徴・労働環境・健康課題を深く理解できます。例えば、IT系の部署ではメンタルヘルスが課題になりやすい一方、製造の部署系では健康ハイリスク者の支援が重要になることがあります。このような違いを把握することで、的確なサポートが可能になります。
従業員との信頼関係を築きやすい
担当窓口が一本化され、担当保健師が明確になることで、従業員は「この人に相談すればいいんだ」と安心感を持てます。特にメンタルヘルスのような繊細な問題では、上司と本人との信頼関係や関係者間の連携が重要であるため、窓口を一本化することで相談しやすく、産業保健師もより丁寧なサポートを提供することができます。
業務における健康課題や組織課題を把握しやすい
一つの組織を集中して継続的に見ることで、どのような健康課題が多いのか、どう対応すれば良いのかを経験を通じて学べます。
工場単位や店舗単位に担当するイメージでしょうか?
あっております!
私が統括的な立場であったときは、部門別に担当産業保健師を配置していました。例えば、なのんがA部門1,500人+親会社500人、R産業保健師がB部門1,200人、Y産業保健師がC部門900人+子会社700人など産業保健師の経験年数やキャパに応じて人数配分を調整していました。
組織別担当制の業務分担のデメリット
以下のようなデメリットがあることも把握しておきましょう!
業務量の偏りが生じやすい
グループ会社や部門、部署ごとに従業員数や健康課題の規模が異なるため、特定の時期に一部の保健師に業務が集中する可能性があります。
産業保健師1人あたりMAX1000〜2000人前後の従業員数になるくらいになるように、分けると偏りを防ぐことは可能!
ただ未経験産業保健師さんの場合は500〜900人くらいからスタートできるように調整すると良いと思います!
担当の組織以外の組織への理解が不足
担当している組織ではない部署の課題や情報がクローズド化されやすく、担当外の組織の状況の把握が難しくなる可能性があります。
2〜3年毎に担当する組織を変えたり、日々の情報共有を行っていれば
補完可能!
専任業務担当制
専任業務担当制とは、各産業保健師が特定の業務(例:休復職者支援、健診事後措置、ストレスチェックなど)を専任で担当する割り振りを言いいます。産業保健師は、専任された業務のみ行います。
専任業務担当制のメリット
専任業務担当制には以下のようなメリットがあります。
専門的なスキルに特化できる
各産業保健師が、得意分野を担当することで、専門性が深まり、対応の質が向上する。例えば、Aさんが健康診断フォロー、Bさんがメンタルヘルス対応というように、特定の分野に特化することで個人単位では知識や技術が深まります。
効率的な対応が可能
同じ業務を繰り返し行うことで、効率よく対応できるようになります。
専任業務担当制のデメリット
専任業務担当制には以下のようなデメリットがありますので要注意です。
相談窓口が複数になり、窓口に迷う
従業員が「誰に相談すればいいのか分からない」と感じることがあったり、たらい回しになるケースがあります。例えば、事後措置でフォローの対象となったAさんが、メンタルで休職した場合、事後措置はA産業保健師、休復職支援はB産業保健師となり、混乱が生じることがある。
属人化しやすい
担当業務以外携わることがないため、担当が何らかの事情で不在の期間が長くなった場合、業務が回らなくなる。属人化させやすく、担当者の入れ替わりの時に引き継ぎや情報共有に時間がかかる。
その業務以外担当することがなければ、
その業務の知識や経験は身に付かなくなりそうですね、、、
よくありがちですね。
例えば、事後措置の保健師面談の担当であればメンタル不調者の対応は基本的にやらないため、メンタル不調者対応ができない産業保健師が出来上がります。
専任業務担当制の大きなデメリットですね。
なのんがおすすめする「ハイブリッド型分担制」
上記のメリット・デメリットを踏まえ、なのんがおすすめするのが、”組織別担当制”と”専任業務別担当制”を組み合わせたハイブリッド型分担制です。
組織別担当制で、全般的な管理を行う
各産業保健師は、組織別担当制で、各担当組織の全般的な管理を行います。全般的な管理とは、事後措置や休復職者支援の保健師面談の実施、二次検査受診勧奨の案内送付、健康相談、各事業所への衛生委員会(安全衛生委員会の参加)、ストレスチェックのフィードバックなどの担当組織に実施します。担当組織の従業員対応や組織の健康課題の解決などの産業保健サービスの実務を提供します。
専任業務担当制でプロジェクト管理
各保健師が各プロジェクトごとに主担当となり、各プロジェクト全体の課題解決や企画提案、進捗管理、産業保健サービスの品質の担保を行います。
プロジェクト毎の主担当の役割
主担当は、各プロジェクトのPDCAを回していきます。各産業保健師が、PDCAの中の「Do」である担当組織の全般的な管理ができるようにプロジェクトを管理していきます。
- 課題の洗い出し
- 企画提案
- 進捗管理
- 評価指標の設定
- 目的とゴール設定
- プロジェクト毎の産業保健サービスの実務面の品質担保
- マニュアルの作成
- 改善提案 など
優先順位の例 | 各プロジェクト名の例 | 評価指標の例 | 担当者の例 |
---|---|---|---|
最優先業務 | 定期健康診断 | 受診率100% | R産業保健師 |
事後措置 | 健康ハイリスク者率 -◯%減 | N産業保健師 | |
休職・復職支援 | メンタル休職率 -◯%減 | Y産業保健師 | |
優先&効率化業務 | ストレスチェック | 受検率100% | Y産業保健師 |
研修・健康教育 | 行動変容率 ◯%アップ | N産業保健師 | |
海外渡航者・帰国者対応 | 法令に基づく対応ができている | R産業保健師 | |
安全衛生委員会 | 法令に基づく委員会の運営 ができている | Y産業保健師 | |
健康管理システムの導入・保守 | 健康管理システム導入による 作業時間◯時間減 | N産業保健師 | |
交通安全 | 労災件数◯件減 | R産業保健師 | |
特殊健診 | 対象者管理データベース化 | R産業保健師 | |
情報管理 | 法的根拠に基づく管理ができている | N産業保健師 |
ハイブリッド型の利点
- 組織別担当保健師を窓口として、窓口を一本化することで、従業員との信頼関係を築きやすい。
- 主担当がチーム全体をサポートすることで、効率的な業務遂行が可能。
- 新人保健師が担当組織を理解し全体を把握しながら、主担当のプロジェクト運営スキルやプロジェクトの専門性を磨ける。
魅力的ではあるのですが、
結構色々覚えなちゃいけなくて大変な気がします。
そうですね!最初の1年目はそう感じるかもしれません。
最初の1年目は担当組織の人数を少なくすることや比較的軽めのプロジェクトを任せるなどで業務量を調整すると良いと思います!
なのんの意見としては、産業保健師は一部の業務ができれば良いというものではなく、現場を見て、組織の健康課題を産業保健サービスの提供を行うことで解決する経験をどんどん積んだほうが良いと考えています。
産業保健師一人一人の成長とチーム全体の成長を鑑み、ハイブリット型が良いと考えています。
ハイブリッド型分担制を推進する上での実践的なアドバイス
業務量を見える化しよう
担当する業務量をデータとして見える化をしましょう。例えば、各組織の従業員数や頻繁に発生する課題をまとめると、負担のバランスを調整しやすくなります。
なのんが提供している労働衛生業務可視化シートを活用すると
業務の見える化が可能です!
労働衛生可視化シートはこちら👇
👇の書類のアイコンをクリックして、コピーしダウンロードしてみてね✨
業務可視化シートの感想
Threadsで見る
業務の見える化を行うことで、上司にも産業保健師が何を行なっているのか、業務量がどのくらいになっているのかを共有することができます!
定期的なミーティングを活用しよう
チームでの定期ミーティングを通じて、分担の見直しや情報共有を行いましょう。特に、ハイブリッド型を採用する場合は、円滑な連携が成功の鍵となります。
各プロジェクトの進捗報告を行うミーティングや担当する組織のフォロー状況・困難ケースの報告など産業保健師の実務の共有を行うミーティングなどを毎月1回以上は行うことで、チーム全体の進捗を把握することができます。
まとめ
産業保健師にとって、業務分担の方法を工夫することは、効率的な業務遂行やスキルアップにつながります。“組織別担当制”か”専任業務別担当制”かという二者択一にとらわれず、ハイブリッド型の柔軟なアプローチを採用することで、現場に適した形を作り上げることができます。
日々の業務を通じて、どの方法が最も効果的かを試行錯誤しながら、チームメンバー全員が自分らしく輝ける産業保健体制を構築していきましょう!
会社に応じて望ましい産業保健体制は異なります!
試行錯誤しながら、より良い体制を築いていきましょう!
応援しています!
もしお悩みがある方は、育成プログラムに参加することで新たな気づきや解決のヒントが得られます。みんなと一緒に成長していきましょう!
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています。