【産業保健師向け】安全衛生委員会(衛生委員会)の教科書

こんにちは、産業保健師のなのんです。

初めての安全衛生委員会、緊張しますよね。衛生委員会or安全衛生委員会に参加する産業保健師さんは、こんな疑問やお悩みはありませんか?

産業保健師1年目

そもそもメンバー構成議長が誰なのか、他社はどうなのか知りたいです。

産業保健師2年目

議題づくりに毎回悩んでます。

産業保健師2年目

産業保健師が司会をするって当たり前なのでしょうか?

なのん

私は、産業保健師の実習の際に初めて衛生委員会に参加しましたが、緊張してドキドキでした。

「何を話せばいい?」「保健師はどこまで発言すべき?」と不安になるのは自然なことです。

基本は“衛生(健康)に関する助言や取り組みの報告を行う一参加者”ですが、実務では保健師が取りまとめや司会を任されている職場もあります。「一参加者としての専門助言」+「場の運営支援(必要に応じて)」——この2軸を意識すると、役割が整理しやすくなります。

今回は、衛生委員会や安全衛生委員会についてのリアルをご紹介いたします。

この記事で学べる3つのこと
  • 安全衛生委員会及び衛生委員会のリアルがわかる
  • 安全衛生委員会(衛生委員会)の議題について理解できる
  • 安全衛生委員会(衛生委員会)に参加した際のイメージができる
この記事を書いた人
nanon
産業保健師なのん
  • 新卒から産業保健師歴約15年
  • 産業保健師としての企業での活動実績
    • 産業保健体制の立ち上げ支援 4社
    • オンライン健康セミナー 約10回/年
    • メンタル&フィジカルの保健師面談 約30件以上/年
    • 営業職・研究職・臨床検査職・事務職・配達業務職・小売業・物流センター・製造業・金融業・IT企業など様々な職種の従業員に対して産業保健サービスを提供
目次

安全衛生委員会及び衛生委員会とは

まず初めに、安全衛生委員会及び衛生委員会とは何かについてご紹介いたします。

衛生委員会

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生委員会の設置が義務付けられています。職場の衛生状態の改善や従業員の健康維持・増進、労働災害の防止などに関わる事項を話し合い、必要な対策事業者に提案・推進することを目的としています。

安全衛生委員会

安全衛生委員会は、労働安全衛生法に定める職場の安全と健康を確保する目的で設置される委員会であり、労働安全衛生法第19条より、「安全委員会」と「衛生委員会」の両方の設置義務を持つ事業場は、これらを統合して「安全衛生委員会」として設置することができます。労使(事業者側と労働者側)が一体となって、労働災害や健康障害の防止、職場環境の改善について協議しています。

安全衛生委員会の設置基準についてはこちら

毎月1回以上の開催が義務付けられており、事業者は委員会の議事概要を労働者に周知し、重要な議事録は3年間保存する必要があります。

安全衛生委員会(衛生委員会)の参加者(構成の基本)

安全衛生委員会(衛生委員会)は、会社側と労働者側の代表が参加し、議長(多くは工場長や部門長クラス)のもとで運営されます。代表的な構成は次のとおりです。

安全衛生委員会(衛生委員会)構成メンバー

安全衛生委員会(衛生委員会)構成メンバー(例)
  • 議長:事業の実施を統括管理する者(工場長・事業統括部門長・人事部長など)
  • 衛生管理者・安全管理者:人事・環境安全などの所属メンバー。人数が多い場合は複数名になることも。
  • 産業医(専属/嘱託)
  • 衛生に関し経験を有する者(各部の部長・課長・リーダー等。産業保健師がこの枠で参加することも
  • 安全に関し経験を有する者(各部の部長・課長・リーダー等)
なのん

会社によって誰が参加しているのかが違ってきます。必ず構成メンバーを把握しましょう!委員会の参加者は産業保健活動を行う上でのキーパーソンです。

構成比率の基本:議長を除き、会社側:労働者側=1:1が望ましいとされています(例:会社側が8名なら労働者側も8名)。

現役産業保健師の参加状況

現役産業保健さんへ委員会への参加の有無をアンケート調査しました。会社の方針によって、参加が必須かどうかが変わってきますので、必ず確認しましょう。

アンケート調査結果
  • 産業保健師の約8割が委員会に参加
  • 一方で、約2割(22%)は未参加/他者参加/不明で、委員会との接点が弱い層が一定数存在。
2025年7月30日アンケート調査
なのん

私が産業保健サービスを提供しておりますクライアント様方のうち1/2が衛生委員会での保健師参加が必須になっていますので、概ね委員会へ参加されている保健師は多い傾向です。

産業保健師Instagramフォロワー様より、以下ご感想を頂いております。自社だけでなく、他社を知ることは自社での当たり前を疑い、より良い産業保健活動を行う上での一歩です!


安全衛生委員会(衛生委員会)の議題

委員会で扱うテーマは大きく4つの柱に分けると整理しやすく、安全/衛生・健康/人事労務/その他(周知・企画)の観点を毎回バランスよく配置すると“偏り”を防げます。

議題
安全面
  • 労働災害(業務内・通勤)
  • ヒヤリハット
  • 交通事故の報告と対策
  • 危険箇所の報告
  • 職場でのケガや体調不良の報告
  • 安全教育に関する事項
  • 転倒災害 など。
議題
衛生・健康面
  • 職場巡視の結果報告/作業環境測定結果の報告/リスクアセスメント/5Sの実施状況
  • 健診(有所見)結果の報告、産業医講話、保健師の健康情報
  • 面談件数や健康管理室利用状況
  • ストレスチェック結果
  • 保健師巡視結果報告( ※保健師が職場巡視を個別の取り組みとして行っている場合)など。
議題
人事労務面
  • 長時間労働の実績
  • 面接指導・産業医意見
  • 休復職状況
  • 有休取得率
  • 健保組合からの案内
  • 人事制度説明
  • 人員配置や人員管理 など。
議題
その他(周知・企画)
  • 健康診断/事後措置・特定保健指導の周知、予防接種、ストレスチェック受検、健康セミナー案内 など。

安全衛生委員会(衛生委員会)の流れ

安全衛生委員会(衛生委員会)は、以下の流れで30分〜1時間程度実施されています。

  1. 挨拶:進行の挨拶
  2. 前回アクションの進捗回収(5分):担当・期限・達成率を確認
  3. 安全報告:災害・ヒヤリハットなどの報告。原因→対策合意
  4. 職場巡視報告:産業医による職場巡視報告
  5. 衛生・健康:健診・面談・ストレスチェックの要点→リスク者対応など
  6. 健康講話:必要に応じて、産業医or保健師による衛生or健康講話
  7. 人事労務:長時間労働・休復職・有休などの指標レビュー
  8. その他・周知:今月の周知物・セミナー・防災訓練・全社告知の周知

会議後は議事録を作成し、産業医・部長・各部門長など関係者へ回覧するとともに、社内掲示板に掲載して全従業員が閲覧できるようにするのが一般的です。

なのん

製造業や工場系では、「ご安全に〜」から始まり、「ご安全に〜」で締め括られることが多い傾向です!


Q & A(よくある疑問と回答)

産業保健師が安全衛生委員会(衛生委員会)に抱きがちなよくある疑問に対して、なのんだったらどう考えるのかを回答いたします。

産業保健師は司会をすべき?

基本は“一参加者としての専門助言・報告”が役割です。ただし、職場事情(立ち上げ期/前任の慣習など)で保健師が取りまとめるケースもあります。任される場合は、運営=中立進行/専門助言=内容支援を分ける意識を。

議長は誰?

多くは工場長や事業統括部門長、人事部長など管理職クラスが議長になることが多いです。

メンバー比率はどう整える?

議長を除き、会社側と労働者側を1:1に揃えるのが望ましいとされています。偏りがあると合意形成の信頼性が下がるため、割合比率を整えるのが良いですが、中小企業の場合、労働者側が忙しく、参加が難しいため、会社側に偏ってしまっているケースもあります。

議題が“健康ネタ”に偏ります。

フルリモートOKの会社では労災が少なく、議題が衛生・健康に偏りやすくなります。まずは、会社の期待や優先課題に合わせて運営することが最優先です。
一方で、メンバー内でも偏りが課題だと感じるなら、議題を「安全/衛生・健康/人事労務/その他」の4本柱にテンプレ化し、各柱にKPIを1つ置きましょう。(例:安全=月次災害0件、衛生=事後措置対象者率、労務=長時間該当者率、その他=周知リーチ率)。

“報告だけで終わる”のを防ぐには?

安全面(労災・ヒヤリハット)は、事前に「なぜなぜ分析(5Whys)」を実施したうえで、事実報告→原因→対策までをセットで報告してもらいましょう。
議事録は、各議題について「原因」「対策案」「担当」「期限」「評価指標」の5項目を必須欄に設定します。さらに、次回委員会の冒頭5分を“宿題回収”の固定枠にし、前回決めた担当と期限、KPIの達成状況を確認すると、改善サイクルが確実に回ります。


まとめ:安全衛生委員会(衛生委員会)は、安全と衛生を話し合う場

委員会は労使の対話の場。産業保健師は「専門助言を行う一参加者」+必要に応じた運営サポートで十分です。
議題に迷ったら「安全/衛生・健康/人事労務/その他」の4本柱を中心に議題を展開していきましょう。
報告で終わらせないよう「なぜなぜ分析→原因・対策・担当・期限・指標」を議事録にしていくことがベストですが、焦らず、会社のペースで進めていきましょう!

📌 この記事が参考になったら、ぜひ保存&シェアで周りの産業保健師の仲間にも届けてくださいね!

最後に ― 一緒に学び、実践しよう!

ご覧いただきありがとうございました!
産業保健師の役割や業務に悩んでいる方は、私が主宰する産業保健師育成プログラムで気づきのヒントを得られるかもしれません。

  • 受講中に現場で起こっているお悩みをケーススタディとして検討
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育成プログラムを受講することで、解決の糸口が見つかることも!みんなと一緒に成長していきましょう💪

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一緒に成長していきましょう!

\ 産業保健師の実践力を鍛える

最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!

この記事を書いた人
nanon
産業保健師なのん
  • 産業保健師の転職から成長までトータルサポート!
  • 産業保健師の転職支援の実績
    • 延べ約50名の転職相談を担当し、内定率90%を達成
    • 履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ支援により、書類通過率90%
    • 模擬面接+フィードバックにより、「自信を持って面接に臨めた」と高評価
  • 産業保健師の実務相談および育成プログラムの実績
    • 個別実務相談(事後措置・休復職支援など)を約10名分実施
    • 「入門コース」(5名)→「実践コース」(11名)の育成プログラムを提供
    • 産業保健師向け勉強会(つながる産保カフェ)を毎月開催し、延べ参加者数30名以上、「勉強になった」「新しい視点を得られた」と高評価
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