ストレスチェックの集団分析、”その後”どうしてる?——産業保健師19名に聞いてみました

ストレスチェックの集団分析、”その後”どうしてる?
産業保健師19名に聞いてみました
こんにちは、産業保健師の永松希望です。
毎年やってくるストレスチェック。実施して、高ストレス者対応をして、集団分析の結果が届いて……そのあと、みなさんの会社ではどうなっていますか?
「委員会で報告して、なんとなく終わってしまう」
「気になる部署はあるけど、どこまで踏み込んでいいのか分からない」
——そんなモヤモヤ、実は私もずっと持っていました。そこで今回、産業保健師のみなさん19名にご協力いただき、「集団分析の”その後”」の実態調査を行いました。この記事では、その結果を包み隠さずシェアします。きっと「うちだけじゃなかったんだ」と思ってもらえるはずです。
ご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました!
01調査の概要
内容:集団分析の実施状況、フィードバック、高ストレス部署・良好部署への対応、保健師の関与範囲など32問。回答してくださったのは、企業内の産業保健職が14名、外部委託・フリーランスが3名など。経験年数は3年未満の方が約6割で、若手のリアルな声がたくさん集まりました。
02結果①:「分析まで」はみんなやっている。落ちるのはその後だった
活用のステップ順に実施率を並べてみると、こんな”階段”がみえてきました。
「数字を見る」から「職場に入る」へ進むところでガクッと下がり(63%→42%)、そして「良い部署に学んで、広げて、翌年につなぐ」というPDCAの後半は、2〜3割しか到達していませんでした。「分析→委員会報告で止まってしまう」のは、あなたの会社だけじゃなくて、多数派だったんです。
03結果②:つまずきの原因は、スキルじゃなかった
個人的にいちばん大事だと思った結果がこれです。
つまり、私たちが勉強不足だから活用できないんじゃない。「いつ・誰が・何をするか」が会社の中で決まっていないから、進まない。もし「自分の力不足かも……」と落ち込んだことがある方がいたら、この数字を思い出してください。課題は体制であって、あなたではありません。
04結果③:「どこまで関わるべきか」——迷っているのは、あなただけじゃない
改善策に落とし込むうえでの難しさを聞いた設問では、「現場が忙しく改善活動まで手が回らない」と並んで、「保健師としてどこまで関わるべきか迷う」が9名(47%)にのぼりました。
しかもこの迷い、経験10年以上のベテランでも3人中2人が選んでいます。経験を積めば自然に解消するものではなく、役割分担が明文化されていないという構造の問題なんですね。
自由記述にも、リアルな声がたくさん寄せられました(一部を要約してご紹介します)。
健康リスク値が明らかに高い部署の部長に伝えても、「みんな辞めちゃうから仕方ない」と自分ごとにしてもらえない。
対策が薄いので、年々回答率も低下傾向になりつつある。
総務が主体で実施していて、自分は健保所属。どこまで介入すべきか分からない。
結果の良くない部署ほど、忙しくて職場環境改善に意欲を持てていない。
うなずきすぎて首が痛くなりそうです……。
05希望もありました:うまくいった5つの実例
暗い話ばかりではありません。「これはうまくいった!」という事例も5つ集まりました。
事例1良好部署からフィードバックを始めた
良い点を伝えてグッドプラクティスを聴取し、集めた工夫をワースト部署へ紹介。「指摘」から始めない設計。
事例2量を変えられない中で、会話を増やした
業務量も裁量も変えられない部署で、1on1+雑談・グループMTGでの会話を意識的に増やしたら、同じ量的負荷でもイライラ・不安・抑うつが改善。
事例3他社事例を”翻訳”して提案した
同業他社の成功事例を紹介し、自社に合わせた活用案とセットで提示。
事例4管理職を主役にした
高ストレス職場の管理職を集めて外部講師のグループワーク。保健師はサポート役に徹する。
事例5社長を巻き込んだ
社長から管理職会議で結果を共有してもらったら、優先度が一変。ハラスメント疑い事例の早期発見にもつながった。
気づきましたか?5つとも、分析の腕前の話ではなく「場の設計」の話なんです。誰から伝えるか、誰を主役にするか、どの順番で届けるか。ここに私たち専門職の腕の見せどころがあります。
06明日からできる、3つの実務ヒント
調査結果と成功事例から、すぐ取り入れられそうなヒントを3つにまとめました。
ヒント1フィードバックは「良い部署から」始める
ワースト部署への指摘から入ると、管理職は身構えます(「悪い」とだけ伝わってリーダーが傷ついた、という失敗談も寄せられました)。良好部署から入れば協力者が増え、横展開の素材も同時に集まります。順番を変えるだけの、ノーコストの工夫です。
ヒント2ヒアリングの「型」を持っておく
実施している方が聞いていた項目は、業務量・残業時間・上司とのコミュニケーション・同僚間の関係性・繁忙期や組織変更の影響・管理職自身の困りごと、あたりが定番でした。この項目リストを1枚持っておくだけで、「職場に入る」ハードルはぐっと下がります。
ヒント3報告の前に「次の一手」を決める
「分析→報告のみ」で終わると、翌年の回答率低下という形で従業員に見透かされます。委員会報告の資料に、小さくてもいいので「今年はここに一歩踏み込みます」を1行入れる。これだけで一過性の報告が、翌年へつながる報告に変わります。
07これからの話:50人未満にも義務化がやってきます
最後にひとつ、未来の話を。2025年の法改正で、ストレスチェックの実施義務は50人未満のすべての事業場に拡大されることが決まっています(公布後3年以内に施行予定)。
小規模事業場には産業医も衛生委員会もないことが多く、「実施したけど、どうすれば?」という企業がこれから確実に増えます。つまり——集団分析を”活用”まで支援できる産業保健師の出番は、これから広がる一方だということ。
📌 調査からの主要メッセージ
① 分析実施は89%まで進んでいるが、横展開・翌年比較まで到達しているのは21%。活用のステップが後半になるほど落ちていきます。
② つまずきの原因はスキル不足ではなく体制。「見方が分からない」はわずか1名、「体制がない」が11名(58%)と最多でした。
③ 「どこまで関わるべきか」の迷いは経験年数を問わず存在。ベテランでも3人中2人が同じ迷いを抱えており、構造的な役割分担の課題です。
④ 成功の鍵は分析の腕前ではなく「場の設計」。誰から伝えるか、誰を主役にするかを工夫した5つの実例が、その具体像を示しています。
今回の調査でみえた「体制づくり」「場の設計」の力は、まさにその時に選ばれるスキルです。いま迷いながら試行錯誤していることは、ぜんぶ未来の武器になります。一緒に準備していきましょうね。
この記事が「うちもやってみようかな」の小さなきっかけになれたら嬉しいです。
回答者の個人情報・所属企業名は一切公開していません。
©︎ 2026 産業保健師 永松希望

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