【保存版】産業保健師のための健康管理システム実務ガイド|現場のリアルと検討ポイント

こんにちは、産業保健師のなのんです。
産業保健の現場では、健診結果・ストレスチェック・面談記録・就業配慮・復職支援を一元管理できる「健康管理システム」を導入する流れが広がっています。
ただ、導入済みの職場でも未導入の職場でも、健康管理システムに関して共通の悩みは起こりがちです。
――こんなモヤモヤ、ありませんか?

使い勝手が悪く、入力や抽出に時間がかかり、結局が部分的にExcelに逆戻りしています。



システムの仕様に現場運用が複雑化して翻弄されています。



健康管理システムがあると便利ですが、そもそも自社に必要なのでしょうか?



長く勤めた前職で、システムがない頃から導入、マニュアル&運用整備まで経験しました。だからこそ、みなさんの「ここが大変…モヤモヤ」というお気持ち、、、わかります。
この記事では、産業保健師が健康管理システムの長所・短所を見極め、健康管理システムを正しく評価し、自社の現場に合わせて導入の是非と自社の現場に合う導入・運用を検討できるように解説しています!
- 現役産業保健師の健康管理システムのリアルがわかる
- 健康管理システムの導入効果を言語化できる
- 健康管理システム導入時の検討ポイントを理解できる


- 新卒から産業保健師歴約15年
- 産業保健師としての企業での活動実績
- 産業保健体制の立ち上げ支援 4社
- オンライン健康セミナー 約10回/年
- メンタル&フィジカルの保健師面談 約30件以上/年
- 営業職・研究職・臨床検査職・事務職・配達業務職・小売業・物流センター・製造業・金融業・IT企業など様々な職種の従業員に対して産業保健サービスを提供
基礎から実践まで、“できる産業保健師”を育成!
健康管理システムとは何か?


健康管理システムは、企業の産業保健業務(健診・ストレスチェック・面談・就業配慮・復職支援など)を一元管理し、フォロー漏れ防止と法令対応、業務効率化を実現するための仕組みです。
医療機関の電子カルテのイメージと近いですが、“職場の健康情報やそれにまつわる情報を一元管理できるシステム”です。
健康管理システムで、できること(主な機能)


健康管理システムの製品ごとに機能は異なりますが、現場でよく使う代表機能は次のとおりです。
- データ集約:健診結果・ストレスチェック・面談記録・休復職/就業配慮・ワクチン等を社員IDで、データ統合
- 自動抽出・アラート:健診未受診者、要精密検査の受診、要面談、高ストレス者などを自動抽出し、メールやシステム内で通知
- ワークフロー:産業医意見→上長/人事→本人通知までの就業上の措置を電子稟議化
- ダッシュボード:受診率、再検査受診率、面談完了率、就業措置件数など数値化して可視化
- 帳票・レポート:報告書、個人通知文のテンプレ出力
- 権限・監査:医療職/人事/ラインで権限分離、操作ログ・第三者提供ログを保持
健康管理システムは、なぜ必要か(導入効果)


「人に依存する運用」から「仕組みで回る運用」へ転換するための一つのツールが健康管理システムです。健康管理システム導入の効果は次のとおりです。
- 工数削減(Excel分散・手作業抽出の解消)
- フォロー漏れの防止(期限管理・自動通知)
- 法令・規程順守の担保(保存年限・同意管理・アクセス制御・証跡)
- 意思決定の迅速化(常時数値化・承認フローの円滑化)
健康管理システムを主に使う人


利用者は“産業保健スタッフ・安全衛生・人事”が中心。役割ごとに閲覧/編集の範囲を分けるのが基本です。主な想定ユーザーは以下になります。
- 産業保健師
- 産業医
- 衛生管理者
- 人事/労務(ロール別に閲覧/編集範囲を分離)
必要に応じてライン管理者や健康経営推進責任者を閲覧権限をつけて、使用可能にする場合があります。
現役産業保健師さんの健康管理システム状況のアンケート結果


現役産業保健さんへ「健康管理システム」の使用の有無をアンケート調査しました。
- 産業保健師の現場の7割強がすでに活用 or 導入予定。
- 紙カルテやエクセル管理が3割。所属する企業によって、コストに合わないため導入できない現場もある。





私の体感値として、従業員数1,000人以上の企業に所属する産業保健師さんは健康管理システムを使用しているのではないかと感じています。
現役産業保健師さんが使っている健康管理システムのリアルボイス


ここでは、フォロワーの産業保健師さんから寄せられた実際の使用感をシステム別に紹介します。※あくまで個々の職場・運用条件での体験談です。選定の際は自社要件と照らしてご判断ください。
Instagramフォロワーさんで最も利用者が多かったシステム。



使っていてだいぶ慣れてきた/機能は一通り揃う。コストは高めだが、健診予約の工数削減・過去対応の一元化・健康経営データの自走化に期待。産業医意見書を上司・本人が確認→承認できる。



詳細ソートが強みだが、項目が多く操作が難しい場面も。紙文化のベテランにはハードルを感じることがありそう。健診機関ごとの判定差や結果がすべて取り込めないなど運用課題も。導入2年でもストレスチェックのみ活用にとどまるケースあり。



電子カルテ的な要素。従業員が健診結果の閲覧や自己入力(血圧・体重・歩数)ができる。二次検査結果の入力/受診勧奨にも対応。健保の健康支援事業に近い印象。気になるのは従業員の活用率。



従業員が経年で健診・ストレス結果を閲覧できる。受診勧奨の一斉メール/面談予約・記録/集団分析/労基署報告まで一気通貫で便利。愛知県でよく使われている所感あり(個人の印象)。「病院を持つ企業は富士通が多いと聞いたことがある」との所感あり(個人の印象)。



まだ使いこなせていない印象。健康管理システムとストレスチェックを別システムで運用中。



受診者管理や産業医意見書の作成がテンプレで進む印象。



導入でまだ慣れていないが、委員会議事録の管理まで入れられる。申込フォーム、保健師面談管理、e-Learningなど周辺機能が充実。



健診予約システムとの連携で未受診管理もしやすそう。
Excelへの反映(出力)がしやすいので便利。



面談記録を一覧で読みたいが、1件ずつ開く必要があるのが不便。



使いやすいが、どの製品かより“要件定義が最重要”と学んだ。しっかり要件を固めた上で導入すると良い。



ハピネスを自社でアレンジして利用。画面がシンプルで直感的。面談記録が時系列表示で見やすい。特殊健診の業務歴管理ができる。



まだ使いこなせていないです。



システムは使うほど慣れますが、全機能を使いこなす必要はありません。導入済みの現場は、まず必要な機能だけを確実に回せば十分です。
健康管理システム導入時の検討ポイント


導入は“ツール選び”ではなく“運用設計”から。まず「何を減らし・何を増やすのか」を数値で決め、その達成に必要な機能と体制を逆算します。以下の6点を押さえると、迷いが減り、比較もブレません。


何を“減らす/増やす”ために導入するのかなど導入するシステムの目的や達成したい目標を明確にする。例えば、従業員の健康状態の把握、健康管理の効率化など。
- 導入の狙いを明確化:何を“減らす/増やす”ために導入するのかなど導入するシステムの目的や達成したい目標を明確にする。例)事務工数を何時間減らしたい。紙カルテを持ち出す紛失リスク&情報漏洩のリスクを減らす。
- 対象と範囲:健康管理システムで管理する対象の範囲を決める。特殊健診結果も入れる?。グループ会社も含む?
- 期間と達成基準:3か月・6か月・12か月のマイルストーンと“達成/未達の判断条件”を明記


- 目的を達成するための必要な機能をリストアップ:「保健師として、未受診者を1クリックで抽出したい」「産業医として、意見書→上長合議→本人通知を電子稟議にしたい」「ストレスチェク受験や長時間労働者への問診をシステムで行い、産業保健スタッフのメール対応の工数を減らしたい」など
- Must/Should/Couldで優先度付け:
- Must(例):データ取り込み、未受診/要精密検査の自動抽出、就業措置ワークフロー、ダッシュボード、帳票出力など
- Should(例):特殊健診の業務歴管理、保存年限管理、第三者提供ログ、受診勧奨メールテンプレ編集など
- Could(例):クロス分析、他社でシステムで実施したストレスチェックの取り込み、
- 過剰機能を回避:使わない機能をもったいないと感じ、逆にわざわざ使おうとすることでシステムに振り回される。最初は“使う機能だけ”に絞る。


使いやすいインターフェースを持つシステムを選ぶ。産業保健師や産業医衛生管理者などが直感的に操作できることが重要。
- 迷わない画面:検索/フィルタ/並べ替え、テンプレ入力、エラーメッセージの分かりやすさ
- 教育設計:操作説明会の実施や短時間レッスンをシステム会社に行なってもらう&保健師が操作を覚え、産業医などにアドバイスできるか


既存のシステムや人事システムと互換性があるか、データの統合が容易にできるかを確認する。これができると情報の一元管理が可能となる。
- 社員IDの一意性:人事マスタとのデータ統合ルール(退職/再雇用、異動反映)
- 取り込み・連携:CSV/Excelで可能か
- コード設計:事業場・部署・雇用区分・職種のマスタ整備→異動時の自動反映


導入にかかる初期費用だけでなく、運用やメンテナンスにかかるコストも考慮する。予算内で持続可能なシステムを選ぶ。
- 見積りの内訳を可視化:初期/移行/教育/保守/改修/ユーザー数/保存容量/監査対応/バージョンアップ
- 3~5年の総額で比較:安価な初期費でも、運用・改修で高くつくケースを排除
- 隠れコスト:カスタム帳票、追加権限、夜間サポート、解約・データ持ち出し費用


自社のニーズに合わせてカスタマイズが可能かを確認する。柔軟な設定や機能追加ができるシステムが望ましい。
- “設定”でどこまで行けるか:項目追加・画面レイアウトなど
- 開発が必要な境界:開発時のリードタイム/費用/バージョンアップ時の影響(非互換)を事前確認
Q&A(よくある相談)


次に、健康管理システムに対するよくある質問に対して、なのんだったらどう回答するのかをご紹介いたします。
- 今のシステムが使いにくい。すぐ乗り換えるべき?
-
即乗り換えはNG。まず“何がどれだけ困っているか”を数字で見える化し、現行システムの設定・運用改善を90日試しましょう。
それでも解消しない機能ギャップが明確なら、総費用(初期・移行・教育・保守)+解約・データ持ち出し費を試算し、乗り換えを検討しましょう。 - 健診機関ごとにフォーマットが違い、取り込みが大変。
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まずは自社標準のフォーマットを作り、各健診機関に提示してその形式で健診データを納品の依頼をします。
対応が難しい場合は、変換ルールで取り込める“柔軟なインポート機能”を持つシステムへの切り替えを検討しましょう。 - 健康管理システムに健診結果を入れる際に、従業員への個人情報の同意は必要でしょうか?
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健康管理システム導入の際に全従業員に同意をとっているケースは見たことがないです。法定の健康管理目的(健診結果の記録・事後措置 等)で取得・利用しているなら問題ありませんが、個人情報に厳しい会社は、就業規則や健康管理規程/個人情報保護規程などで目的・範囲・提供先などを周知している運用が多い傾向。個別の“再同意”を求めない方が、同意をとるステップをとることで、同意しないという選択肢を与えてしまう可能性を減らすことができます。
まとめ:健康管理システムの導入は慎重に、ツールに合わせすぎない。
今回は、健康管理システムの長所・短所を見極め、健康管理システムを正しく評価し、自社の現場に合わせて導入の是非と自社の現場に合う導入・運用を検討できるようにご紹介いたしました!
健康管理システムは、現場を楽にするツールであり、システムの仕様に現場が翻弄される状況は本末転倒です。導入を検討する際は、慎重になり、投資コストが見合うのかを検討していきましょう!
最後に ― 一緒に学び、実践しよう!
ご覧いただきありがとうございました!
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- 受講中に現場で起こっているお悩みをケーススタディとして検討
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!


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