📝 産業保健師の記録作成ガイド―― “聴く・書く”のその先にある、つながる支援へ

こんにちは、産業保健師のなのんです!
産業保健師のみなさんは、保健師面談前に、このような疑問を感じた経験はありませんか?
産業保健師1年目初めての保健師面談です。面談記録ってどんなことを記載すればいい?



フィジカルとメンタルの面談で、何を聞いてどう書けばいい?



面談記録作成する上での注意すべきポイントは?



私も初めの頃は、面談で何を聞けばいいのか、どこまで書けばいいのか分からず、産業医から「聴取が浅い」と指摘されたり、自分の書いた記録を読み返しても、“何を伝えたいのか”がぼやけて見えてしまうなど悩んでいました。
実は“記録の作成力”は、産業保健師としての信頼を高める重要なスキルのひとつ。
それは単なる「記録」ではなく、産業医や関係者に橋渡しする“情報の命綱”でもあります。
面談記録の作成は、記録の「型」と「目的」が見えると、ぐっとラクになり、自信をもって書けるようになります。
今日は、そんな記録作成のコツを、やさしく整理してお伝えします。
- 産業保健師の面談記録が“なぜ重要なのか”がわかる
- フィジカル面談・メンタル面談それぞれの記録のコツがわかる
- 産業保健師の面談記録が、第三者にもわかる形で残すことができるようになる


- 新卒から産業保健師歴約15年
- 産業保健師としての企業での活動実績
- 産業保健体制の立ち上げ支援 4社
- オンライン健康セミナー 約10回/年
- メンタル&フィジカルの保健師面談 約30件以上/年
- 営業職・研究職・臨床検査職・事務職・配達業務職・小売業・物流センター・製造業・金融業・IT企業など様々な職種の従業員に対して産業保健サービスを提供
産業保健師の面談記録の重要性


記録は、単に「残すため」ではなく、つなぐためにあります。
- 🩺 産業医への橋渡し:医学的判断をスムーズにする
- 🧑🤝🧑 他産業保健師や人事との連携:支援の方向性を共有する
- ⚖️ 法的にも有効なエビデンス:裁判所へ提出しても耐えうる
- 🌱 本人の成長の軌跡:変化や努力を見える化する
つまり、記録とは「人を守り、関係をつなぐツール」。
面談した瞬間の“温度感”を、第三者が読んでも伝わるように残すことが大切です。
フィジカル面談・メンタル面談の記録事項とコツ


フィジカル面談・メンタル面談の面談記録作成の両方に共通して大事なポイントは、「面談」の目的を整理すること。
「この面談で何を達成したいのか」、「面談のゴールはどこか」を保健師自身が整理し、腹落ちした上で面談を行うことで目的に応じた記録事項を記載できるようになります。
その上で、以下のフィジカル&メンタルのカテゴリをベースにすると、漏れなく整理できます。
フィジカル面談(事後措置・保健指導・特定保健指導・復職面談)の記録事項


フィジカル面談は、主に以下の面談を指します。
- 事後措置(定期健診後のフォロー)
- 保健指導
- 特定保健指導
- がんや筋骨格系疾患などの身体由来の療養後の復職面談・復帰後フォロー面談
🔸目的


事後措置や特定保健指導における「身体症状の確認、生活習慣・通院・服薬状況の把握、再発予防」の行動変容支援。就労と健康や治療の両立支援。
🔹主な記載項目


| 区分 | 内容 | 記入のポイント |
|---|---|---|
| 基本情報 | 対応日時・対象者・面談種別・面談対応者(保健師氏名)・面談方法(対面or zoomなど)など | 面談種別は、「健診事後措置」「保健指導」「復職面談」など明記。 対象者は、フォローする従業員の「氏名・社員番号・所属」を記載。 |
| 経過 | 面談に至った背景(事後措置対象基準・パニック値基準・再検査基準に該当、主訴)など | 「面談に至った背景」「面談が必要な項目」「現在に至るまでの自覚症状、受診状況」を簡潔に |
| 健康状態/バイタル/治療状況/血液検査結果 | 血圧・脈拍・BMI・血液検査結果・治療内容・服薬・通院日など | 数値・薬剤名などを明確に、面談で分からない場合は、後ほどメールにて共有いただく |
| 体調/生活状況 | 睡眠・食事・運動・嗜好品(飲酒・喫煙)など | 行動変容ステージも併記(無関心期~維持期) |
| 業務状況 | 勤務時間・残業・仕事内容・出張・運転業務・1人作業・危険業務など | 健康状態悪化に関係しやすい過重労働や交代制勤務など働き方を把握 面談前に事前に把握しておく |
| 主治医意見 | 業務上の支障の有無 | 業務における注意事項や配慮事項の有無を明記(※復職面談や復帰後フォロー面談の場合は特に丁寧に) |
| アセスメント | 状況の整理とリスク評価 | 「血圧高値だが改善意欲あり」「血圧が正常範囲へ改善」など具体的に |
| 指導内容 | 食事・運動・通院・服薬指導など | 「野菜から食べる」「毎朝、血圧測定提案」など行動を明記 |
| プラン/フォロー | 次回支援予定・目標 | 「1か月後受診確認」「家庭血圧記録提出」「フォロー終了」など具体化 |



新米の頃、面談者の「性格や表情、よく使う言葉、考え方や反応の特徴」などを小さなメモとして残していました。
次にお会いするとき、その方に合った言葉や声かけができるように——。
少しでも安心して話してもらえる関係をつくるための、私なりの小さな工夫です。
メンタル面談(メンタル不調・休復職面談・相談対応)の面談記録の記録事項


メンタル面談は、主に以下の面談を指します。
- メンタル不調の健康相談
- 休職前・復職面談
- メンタル復帰後のフォロー面談
- ストレスチェック後の面接指導
🔸目的


心理的ストレスや勤務上の困難の有無などを把握し、医療・職場・本人の三者連携を図る。
🔹主な記載項目


| 区分 | 内容 | 記入のポイント |
|---|---|---|
| 基本情報 | 日時・対象者・面談種別・面談者(保健師氏名)・面談方法(対面/Teamsなど) | 面談種別は、「休職前面談」「復帰後フォロー面談」「メンタル健康相談」など明記。 対象者は、フォローする従業員の「氏名・社員番号・所属」を記載。 |
| 経過 | 不調のきっかけ・期間・受診経緯 | 「○月頃から睡眠不良」「上司依頼で面談」など具体的に |
| 体調・生活リズム | 睡眠・食欲・疲労感・希死念慮の有無 | 体調は「100点中いくつくらい?」と聞くと、本人の実感が可視化 |
| 業務状況 | 仕事内容・仕事の負荷・残業・人間関係・上司の温度感など | 「復職意欲」「上司との人間関係」「仕事の適性」などを評価 |
| 家族・支援状況 | 家族構成・プライベート要因 | サポート資源を把握やプライベートのストレス要因を把握 |
| 主治医意見・診断名 | 主治医の就業可否の意見書・治療方針 | 「療養」「通常勤務可」「制限付き復職」など |
| 本人希望 | 今後の希望 | 「休みたいor休みたくない」の理由、今後の働き方など本人の言葉で |
| アセスメント | 精神的状態と就業可能性 | 「復職の懸念なし」「復帰後の経過は順調」など評価コメントを添える |
| プラン/対応方針 | 職場調整・フォロー面談予定 | 「産業医連携」「次回1か月後面談」など |
Q&A よくある質問


次に、面談記録に対するよくある質問に対して、なのんだったらどう回答するのかをご紹介いたします。
- どこまで詳しく書くべき?
-
“第三者が読んで状況を再現できる程度”が目安です。
感情的表現ではなく、事実と本人の発言を分けて書きましょう。 - 面談時間が短いため、ここまで聴取できません。
-
面談の時間は限られているからこそ、すべてを一度に聴き取ろうとせず、「事前に記録をできる範囲で埋めておくこと」が大切です。
そして、面談の中では聴く内容の優先順位を決めて、特に大切なことから丁寧に聴くこと。
限られた時間の中でも、相手の思いをしっかり受けとめられる“あたたかく、目的のある面談”につながっていきます。 - 守秘義務はどうすればいいですか?
-
特にメンタル面談では、はじめに「お話しいただいた内容は、健康支援のために必要な範囲で、産業医や産業保健スタッフと共有することがあります」とお伝えしておくと安心です。
こうしておくことで、「他の人に話されるのでは…」という不安を和らげることができます。また、本人が人事や上司へ共有してほしくない部分については、その旨を面談記録に残しておくことも大切です。信頼関係を守りながら、支援につなげるための小さな配慮です🌷
- メンタル面談の注意点は?
-
「経過」「本人が考える不調の要因」「体調(主な症状・睡眠・食欲・通院・服薬)」「本人の希望や意向(本人はどうしたいのか)」を必ず確認します。また、面談する際は「視線・相槌」を意識し、PCに記録しながら話を遮らず聴く姿勢を忘れずに。
まとめ:産業保健師の面談記録は、第三者にもわかる形で残すこと
フィジカルの面談記録もメンタルの面談記録も、大切なのは「これまでの経過」「今どういう状態か」「これからどう支援するか」を、第三者にも分かる形で残すことです。
そして何よりも、
“数字と気持ちの両方を聴く”——
それが産業保健師の記録の本質です。面談記録は、思いや判断を“形”にして残すもの。
そして、産業医や人事、次に関わる誰かの行動を支える“小さな灯り”のような存在です。
最後に ― 一緒に学び、実践しよう!
ご覧いただきありがとうございました!
産業保健師の役割や業務に悩んでいる方は、私が主宰する産業保健師育成プログラムで気づきのヒントを得られるかもしれません。
- 受講中に現場で起こっているお悩みをケーススタディとして検討
- 先輩保健師とのグループディスカッションで視野を拡大
産業保健の実務に関するお悩みがある方は、育成プログラムに参加することで新たな気づきや解決のヒントが得られます。みんなと一緒に成長していきましょう!
産保ゆめUPスクールでは、産業保健師の基礎的な実践力を鍛える産業保健師育成プログラムサービスをご提供しています。
産業保健師に必要なスキルや基礎知識、企業で働く上での考え方を網羅し、実践力を鍛え、産業保健師としての成長と自己実現につながる講座となっています。
一緒に成長していきましょう!


\ 産業保健師の実践力を鍛える/
最後までお読みいただき、ありがとうございました!これからも産業保健師としての成長を応援しています!


- 産業保健師の転職から成長までトータルサポート!
- 産業保健師の転職支援の実績
- 延べ約50名の転職相談を担当し、内定率90%を達成
- 履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ支援により、書類通過率90%
- 模擬面接+フィードバックにより、「自信を持って面接に臨めた」と高評価
- 産業保健師の実務相談および育成プログラムの実績
- 個別実務相談(事後措置・休復職支援など)を約10名分実施
- 育成プログラムを約20名へ提供
- 産業保健師向け勉強会(つながる産保カフェ)を毎月開催し、延べ参加者数30名以上、「勉強になった」「新しい視点を得られた」と高評価









コメント